第247回「相手が距離を置こうと切り出してきたらエゴを封印してください」
前回のコラムでは、恋愛が上手くいかない主な要因として、エゴが肥大化してしまうことを指摘しました。
これは恋愛関係だけにのみならず、対人面全般に共通しているポイントでもあります。
「そんなことを言わなくても分かっている」というのが大方の意見でしょう。
ですが、人は極限状態に陥っている時に、自らをコントロールできずに、エゴを前面に押し出してしまうものです。
特に相手の気持ちが自分から離れそうなシチュエーションほど、つなぎとめるために必死になって、熱意を伝えたくなるものです。
皮肉にも相手との関係に溝が生まれて、一気に関係がギクシャクしてしまうのです。
後になってしまって、「あの時の自分はどうかしていた」と冷静になっても、覆水盆に返らずという結末が待っていることが多いのです。
そういう段階になって初めて相談を聴かせていただくことが多いのですが、そこから相手との仲を再構成させることほど困難を極めるものはありません。
相手は別れの選択を取る前段階でどこかSOSのサインを発したり、打開策を示しているものです。
そこを見逃さずに、私欲を抑えて、いかに相手を尊重できるのかが仲直りのポイントになってくるのです。
もう疲れた。今は一人になりたい。距離を置こう。
付き合って数ヶ月が経つ彼からこのような衝撃的な発言をされて、パニック状況になっている女性がいらっしゃいました。
ここでやってしまいがちな選択として、彼にすがってしまう行為があげられます。
自分が悪かった。反省するからもう一度だけ考え直して欲しい。
渾身の想いを伝えるわけですが、彼は「YES」と首を振ってくれません。
もうダメかもしれない。
こんなに好きなのに。
どうして。
このような悲痛な想いを聴かせていただく度に、私は一貫してこう答えています。
「もうこれ以上気持ちを伝えるのを止めて、自分から連絡するのも控えてください」
そう言うと、このような反論が返ってくることがあります。
「そんなことをしたら、自分のことを忘れられてしまうかもしれないし、怖くてできない」
私はそれでも連絡を控えることを強調します。
この状況で、自分から一歩引くという行動以外に、彼の心がまた自分に向かれる可能性が考えられないからです。
中には、いてもたってもいられなくて、次のような行動に移る方もいます。
最終手段として彼に泣きついて、「見捨てないで」という懇願に出るのです。
泣きの涙を見ても彼は受け入れてはくれません。
彼は愛想を尽かして、こう口にするのです。
「別れよう」
良かれと思った行動が全て裏目に出てしまう。
それは、相手にとってエゴであると見透かされているからなのです。
そして取り返しがつかない結末になってしまうのは、実はそのエゴが相手にとって重荷以外のなにものでもないからなのです。
相手が唯一望んでいるのは、あなたと距離を置いて一人になることなのです。
それでもなお気持ちを伝え続けられることほど鬱陶しいことはないのです。
あなたが相手に対する想いの強さを伝えれば伝えるほどこう思うのです。
「やっぱりこの人は自分のことしか考えていないんだ。
俺(私)の気持ちなんてちっとも見てくれていない」
私はこれだけあなたのことを想っているのにとか、これだけしてあげているのにというのは、まさに一方的な愛情の押し付けになってしまうのです。
そうして相手の気持ちは急速に冷めていくのです。
もう一度言います。
相手の態度が素っ気ないからと言って、連絡をしたり気持ちを伝えるのを止めてください。
連絡すればするほどあなたの価値は落ちていって、心の距離も開いてしまうのです。
シビアなことを立て続けに述べてきましたが、私は今あなたが置かれている状況や心境はよく分かります。
相手が自分から離れていってしまうかもしれない不安でいっぱいなのですよね。
自分に原因があるからと責めてしまっていて、いてもたってもいられないのですよね。
あの頃の相手とは180度変わってしまったというショックと、また戻って欲しいという切なる願いで、いっぱいなのですよね。
そういう不安とがんじがらめになっているあなたは、付き合い当初のような輝いていた自分ではないのですよね。
そんな本来の自分を見失っている状況だからこそ、相手にすがりついたところで、受け入れてもらえないことの方が自然なのです。
相手はきわめて冷静です。
あなたの異変ぶりを感知して、お互いの打開策として、距離を置きたいと提案しているのです。
あなたとの未来をまだ考えているのです。
だって相手は別れたいとは一言も発していませんよね。
相手はあなたの精一杯の想いを分かった上で、離れる選択を望んでいるのです。
あなたと別れたいのではなくて、あなたとの関係を一旦整理したいという思いからなのです。
相手はあなたとの純粋に楽しかった記憶が残っているからこそ、踏みとどまっているのです。
距離を置いて離れ離れになるからこそ、もう一度あの頃のように穏やかな関係を再構築するためには、何が大切なのかを見つめ直せるのです。
そして、そこから再生が始まります。
もしこのコラムをご覧になっている方が、大切な人との間で重大な決断を迫られている状況だとしたら、まだ間に合います。
ぜひ一度踏みとどまって、衝動的になりそうになったら、このコラムを何度も読み直していただければ嬉しいです。
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