第217回「ちょっと待って、ぐっと堪えると、リアクタンス効果が生まれるかもしれません」

2015年12月1日上手くいかない恋愛関係

人は極限的な場面に直面した時にこそ、自分でも思ってもみないような行動を取ってしまうものです。

例えば、大好きだった人に直接告白して、その返事がLINEで返ってきた時です。

ドキドキしながら画面を凝視すると、「ゴメンなさい。これからも友達のままでいましょう」という無慈悲な数文が飛び込んできたとします。

絶望の無力感の感情が俄然押し寄せてきて、そのままの衝動から、

「これだけ好きなのに何がいけないんだよ。じゃあもういいよ!!」

的なやけくそ発言をぶつけてしまう経験はよくある話です。

数日経ってみて、本当はまだ好きなのに、自分が辛いために不本意な発言をしてしまったことに気づいても、身から出た錆で挽回が難しくて、後悔の念に苛まれている方のうめき声を幾度となく聴いてきました。

他にも、

破局の場面で、相手から一方的に別れを宣告された時、

連絡が頻度が明らかに減ってしまった時、

デートの約束を回避され続けた時、

デート当日にドタキャンされた時、

このような味気ない態度を示された時に、それまで溜まっていた相手への不満が噴出してしまうように、責め立ててしまうことは、誰もが経験しているのではないでしょうか。

その結果、相手にドン引きされてしまい、信頼関係に修復不可能なヒビが入ってしまった場面になって、必死になって取り戻そうと私に話を聴かせていただくことが多いのです。

正直なところ、そのタイミングで相談者様のニーズを満たせるようなアドバイスをかけることには、非常に困難さを感じています。

「自分はこれだけ相手のことが好きなのに!なんであなたは応えてくれないんだ!」

そのやるせなさが痛いほど私の胸に響いています。

失恋が"執恋″に転換してしまった後処理ほどしんどくて、エネルギーを必要とすることはありません。

その想いが相手にとっては"重い″に受け取られてしまうと、あなたがすることなすことが裏面になるのです。

そういう一連の過程をうかがっていると、もしもあの場面で、自分の気持ちをぐっと堪えられれば、また違う未来が築けたのになぁ~と、しみじみと感じる場面が多いのです。

大好きな想いがなぜ裏目に出てしまうのか、今回はすれ違う気持ちの背景に着目したいと思います。

好きになればなるほど相手の気持ちが離れてしまったり、冒頭のシチュエーションのように、相手の気持ちが自分には向いていないような振る舞いを見せてきた時、あなたの心には、「心理的リアクタンス」が発生しているのです。

人は生来的に自分の行動や選択を自分で決めたいという欲求があります。

しかし、それを他人から強制されたり奪われると、無意識的に反発的な行動を取ってしまうという、社会心理学者ジャック・ブレームが提唱した理論です。

要は、人は自由を制限されることによって、自由を取り戻すために執着するようになるという原理です。

人は、得る可能性よりも、失う危険性によって、衝動的な行動を起こしてしまうことを指摘しています。

相手にとっては強要されているようで、自分の気持ちに向かせるために説得すればするほど、心は離れていってしまうわけです。

では、そのような修羅場に立たされた場面で、活路は見出せるのかどうかという話ですが、その答えがコラムタイトルである「ちょっと待ってみて、ぐっと堪えて引いてみる」という英断です。

不本意でも、自分の感情は二の次にして、相手の行いを一度認めてあげることこそが、唯一今後新しい関係を築けるチャンスに結びつくのです。

そして、ここからは博打のように思えるかもしれませんが、そこで反対に突き放してみる思い切りから、相手の心を揺さぶる可能性があるのです。

別れを告げられた場面で言えば、

「分かった。真剣に考えてくれてありがとう。君の幸せをずっと願っているよ。楽しかった。元気でね」

という言葉を残して一切連絡をしないでみるような選択です。

デートのドタキャンをされた場合は、相手を責めたくなる気持ちも当然ですが、少しでも次のチャンスにつなげたいならば、

「今回は残念だけどわかった。気にしてないから大丈夫だよ。じゃあまたね」

と切り返すのです。

フェードアウトの形ではなくて、しっかりと去り行く態度を相手に伝えるのです。

相手の意思を汲み取った上で、自分の人生はあなただけではないし、一人でも生きて行けるという態度で伝えることで、今度は逆に相手の心にリアクタンス効果が発動される場合があるのです。

そのような状態では、相手の心の中で次のような変化が訪れています。

自分は今大切な存在を失おうとしているのではないか。

自分の取った行動は、果たして正解だったのか。

答えの出ない自問自答から、それまでの余裕が反転して気が気でなくなり、あなたを強く意識するようになるという展開もあるのです。

実は先ほどの別れ際のシーンと、デートのドタキャン時の対応は、実際に起きた私の事例なのですが、いずれの場面でも、効果が生まれました。

前者では、数日後に元カノから電話がかかってきて、復縁を望んできました。

後者の場合は、次回のデートの誘いは相手側から提案してきたという逆転の展開を迎えたのです。

あくまでも主導権は自分にあるのだから、相手の一言に動揺してはいけないと強く認識していると、時としてこのようなこともあるのです。

人事を尽くして天命を待つではないですが、これまで出来る限りの努力を続けてきた結果、相手が必要としないようならば、こちらから払い下げだというスタンスから、リアクタンス効果を与えることも出来るのです。

けれども、忘れてはならないポイントが2点あります。

1つは、押してダメなら引いてみてもダメだということです。

いざという場面で、こちら側が身を引いたからと言って、全く相手から連絡が来なかったり、それ以上の仲に進展しない可能性も高いです。

そもそも縁がない相手だというのが距離を置いて分かるでしょう。

大切なのは、自分の方から相手と離れることで、自分の価値をそれ以上下げることなく、気持ちを冷静に持つメリットがあるのです。

2つ目は、例えリアクタンス効果を与えられて、相手からアプローチをされたとしても、そこから上手くいくとは限らないということです。

私の場合は、一度別れを告げられた時点で、相手との信頼にヒビが入ってしまい、気持ちが冷めてしまったのもあって、復縁後に新しい関係を築くことは出来ませんでした。

縁がある相手ならば、こちら側に心理的負荷が続くような関係ではないものです。

将来を考えられる相手かどうかを見つめ直すためにも、いざという場面では、ちょっと待って、ぐっと堪えて、可能ならば突き放してみる選択をオススメします。

2015年12月1日

Posted by TAKA