第136回「私も忘れることができない過去を背負って生きています」その5

2015年12月1日実体験・人間考察コラム


アキラと離別した私は、ようやく自分が望んでいた自由を手に入れることができました。


これで新しい大学生活をリスタートできる。

いざ新しい幕開けを切った矢先に、心はワクワクするどころか、ズキズキする胸の痛みと、虚無感に支配されていました。

私の心の中は、未来への希望よりもサークルのメンバーやアキラを裏切った罪悪感の方が勝っていたのでした。

目を背けて見てみぬふりをしようとしても、隠し切れませんでした。

学科の同級生の前では、何事もなかったかのような振る舞いをしているものの、夜になると決まって沸き起こるのは、アキラ達への自責の念。

何をしても拭いきれることのない、塗炭の苦しみでした。

自分を信じてくれた友達を見捨ててしまった心の重圧は、弱冠19歳の自分一人では処理しきれないレベルまで達していました。

そんな憔悴しきっていた私を救ってくれたのは、高校時代の友人のN君でした。

地元で久しぶりに再会したN君に、高校時代の懐かしさが蘇り、変わり果ててしまった過去とのギャップから耐え切れなくなって思わず涙が溢れてきました。

もはや高校時代に輝いていたはずの自分はそこにはいませんでした。

1時間以上堰を切ったように、アキラとの顛末やサークルでの出来事の全てを話すと、彼は、嗚咽する私の背中をさすりながら、こう言葉をかけてくれました。

TAKA氏、その傷は、一生背負っていかなければならないと思う。
でも、TAKA氏が選んだ道は、それでよかったんじゃないか。

N君は、私の愚行を否定することなく、ただただ聴いてくれた後に、そう語りかけてくれました。

まるで、中学2年の運動会の日に、向き合ってくれたあの先生のように。

N君は、中学時代に部活で無二の親友だった相棒と、ふとしたことから修復不可能なくらいの仲たがいになってしまい、今でも引きずり続けている過去を持っていたことを明かしてくれました。

そんなN君が私にかけてくれたそのセリフには、重みがありました。

私は、彼に抱えていたサークル生活の全てを打ち明たことで、心のカタルシスを覚えました。

もうこんな思いは二度と経験したくない。

固く誓いました。

◆大学で初めて開かれた就活ガイダンスの一言で、私の何かが変わった

大学2年次の夏休み前に、私の人生観を変化させる一つのきっかけがありました。

リクルートに就職したOBが、学内で就職フォーラムを開いた時に冒頭で述べていた言葉です。

「大学生活で何かこれだけは頑張れたという体験はありますか」

出だしから以下にわたる言葉は、どんな教授の言葉よりも私の心に響きました。

「大学生活には2通りの生き方があります。

一つ目は何かを残せて終わった人。

二つ目は何も残さないまま卒業した人です。

実は大半の学生は形を残せないまま、何となく4年間を過ごして就職するのです。

でも、いざ就職した時に、“何かこれだけは頑張った”という体験がある新入社員は強いんです。逆境に陥っても、腐らずに、自分を信じて、乗り越えられるのです。

みなさんには残りの大学2年間でぜひその“何か”を見つけてから社会に羽ばたいて欲しいのです」

この言葉は私の生活の根底を揺るがすほどの衝撃でした。

私は、二度目の夏休みを転機に、過去から脱却して、自分らしい未来を作りたいと心から願いました。

そして、それから自分を変えるために、ほんの少しの勇気を出して、行動を起こしました。

新しい挑戦としては、地元で夏期限定のアルバイトを開始して、勉強面では、漢検2級に挑戦しました。

自分なりの自己改革の幕開けでした。

もちろん、それから劇的に人生が変化したわけではありませんし、新しい世界に目を向けようとしても、アキラ達との過去は完全に忘れられたわけではありませんでした。

それでも、目線は着実に切り替わって行きました。

私が始めたことは、難しいことではありません。

手を伸ばせば実現できそうな、興味があって今までチャレンジしたことがない分野に着手したのです。

アルバイトを開始した動機は、「彼女候補の女子に出会えるかもしれない」という邪な動機でしたが、初めてみたら、居心地の良さから3年間続きました。

どちらかというと自分には無縁だった体育会系の世界でしたが、だからこそ自分のような典型的文系人間が重宝されて、今まで知らなかった世界や価値観を勉強させてもらえました。

漢検2級受検に関しては、自分が文学部出身であるという理由もありますが、小学時代に得意だと言える好成績だった科目が、他でもない漢字だったからです。

大学を推薦入試でパスしてきた私は、それまで継続的に一ヶ月以上一つの科目をコツコツ勉強してきた経験が皆無だったので、漢検への挑戦は、新しい自分への成長でもありました。

この二つの取り組みが、後の人生につながる大きなきっかけになりました。

結果として、アルバイト先では、彼女はできなかったものの、後に人生初の3回告白をできたほど本気になれた女性と出会うこともできました。

思うようにならない人の心を実体験から学び、誰かのために頑張れる喜びを身をもって知りました。

私がコラムを書き始めたこと、相談室を開設したことも、彼女との失恋経験がきっかけでもあります。

漢検2級にチャレンジしたおかげで、その後、ステップアップして資格取得できたルートが開かれました。

合格という確かな形を手にしたことで、自分を認めることができて、今まで思いも見なかった考えが浮かぶようになりました。

漢検準1級挑戦や、宅建受験などは、漢検2級合格前には想像もしませんでした。

今日では、合格と受験経験を活かして、ブログを通して受験生達に勉強法を指南する役目を務めています。

過去があるから今がある。

「自分を変えたい」という本気の決意と、ほんの少しの勇気で人生は少しずつ好転することを感じ始めていました。

その6ラストに続く

2015年12月1日

Posted by TAKA