第89回「恋愛のチャンスがあるのに自信を失っているイケメンの話」その1

2015年12月1日実体験・人間考察コラム

「俺なんてつまらない男だし、一生彼女ができないんだよ」というのが口癖な18歳の青年がいました。


M君と言って、大学入学後のサークルで知り合った男子です。

ルックスはジュノン系のイケメンで、第一印象から「この男はモテそうだし、遊んでいるな」と感じさせました。

実際、彼はプライベートで二子玉川や渋谷を歩いても、芸能関係やモデルのスカウトによくあっているようでした。

ところが、その外見からは予想もつかない過去を知りました。
 
高校時代は友人と呼べる存在もおらずに、昼食時には人目を避けるかのように誰もいない図書室で取り、休日は家に引き籠ってゲーム三昧な生活を送っていたとのことでした。

中二の夏に、同じ部活の同級生から告白されて付き合ったことがあったそうですが、付き合って一ヵ月ほどで彼女の方から、「M君は私と居てもいつも口数少ないし、何考えているのか分からないから別れましょう」と切り出されたそうです。

彼はそれまでの内向的だった自分から脱却し、新しい志しで心機一転して上京してきました。

いわゆる大学デビューを狙って入学してきたとのことでした。

しかしながら、培った性格と言うのは隠せないもので、何かにつけて発する、「俺なんて○○だよ」という消極的な口癖が災いしたようです。

学科生活では、自分から積極的に友人作りが出来なかったようで、高校時代と同じように一人で講義に出ていたそうです。

そんな彼のルックスに惹かれて、同じ講義に出席していた肉食系女子が近付いてきて、「私と付き合っちゃおうよ」なんてからまれたこともあったそうですが、モテ経験がない故に、どう反応したら良いかわからず、無言で突き放していたようです。

つれない彼の態度に嫌気がさして、次第に離れていったそうです。

彼はサークルで活動している時が唯一素の自分を出せるようで、活き活きとしていました。

自然体の自分を受け入れてくる温かい空間で、そこには彼のように恋愛下手な男子がたくさんいたからです。

そうは言っても、相手が女性となると、異性を意識してしまい、同じサークル中の女子に対しても閉口してしまうのです。
 
そんな彼にも、大学に入学してから3か月後の夏休みに最大のチャンスが到来しました。

彼がサークルで好きになった女子から、一人暮らしをしている自宅にお誘いを受けたのです。

新歓コンパで連絡交換をしたことから、プライベートなやり取りが開始しました。
 
彼からすればメールで意中の相手とやり取りするのが精一杯の勇気で、一字一句練って考えてから送っていたようですが、そんな真面目な彼を好意的に受け止めてもらえたようです。

好きになった女子からのまたとないお誘いで、M君ははじめての出来事に戸惑いつつも期待を込めて出陣しました。

私はその話を聴いて、これはカップル成立するのに違いないなと確信しました。
 
男になって帰ってくるM君を想像して楽しみにしていました。

ところが、帰宅後の彼はいつもにも増して冴えない表情でした。

 
開口一番M君は、「何も進展がなかった」と、うつむきながらぼやいていました。

女性の家に二人で過ごせて、お泊りができるくらいのビッグチャンスだったのに、何もなかったなんてどういうことだと、彼に詰って、一部始終を詳しく聴き出しました。

彼は深夜になるまで2人でおしゃべりをして映画を観て過ごしていたのですが、相手の女性が「そろそろ眠たくなってきた」と彼の肩にうとうと寄りかかってきた時に、緊張がピークに達した彼は咄嗟に、「じゃあ俺はそろそろ帰るよ」と切り出したそうです。
 
彼女は怪訝そうな眼差しで、「もう夜も遅いし、泊まっていきなよ」という彼からすればセカンドチャンスを与えてくれたのです。

彼は突然のその言葉に遠慮しながらも好意に甘えることにしたのですが、「じゃあ俺は床で寝るから、お休み」と、身を寄せている彼女から逃れるかのように、お互い別々に寝て過ごしたとのことでした。
 
もちろん彼はかつてない緊張と興奮で一睡も出来なかったようですが、彼女は背を向けたまま何事もなく朝を迎えたようです。

なんでそんなにおいしい展開をみすみす逃したんだと呆れましたが、彼からすれば、

「付き合ってもいないのに、体を寄せ合って寝たりするのはマズイよ。頭が真っ白になって理性を保つのがやっとだった」
 
と、真顔で答えました、

その日を境に、その女性はM君に対してよそよそしくなっていきました。

相反してM君の気持ちは膨らんで行き、告白を意識していたようですが、メールの返信も素っ気なくなってしまい、サークルで顔を合わせても、目を逸らされたりして、意図的に距離を置かれるようになってしまったそうです。

M君は「どうすれば女性に男として見てもらえるのかが本気で分からない。ますます自信がなくなった」と囁いていました。

彼は過去の成功体験の少なさから自信がなかったために、身の回りに起きているチャンスを活かせず、自分の魅力に気付いていなかったのです。

続く

2015年12月1日

Posted by TAKA