第68回「出逢いのきっかけをつかめば人生は豊かになる」
最近もっぱら出逢いに恵まれていないな~。
こんな人生ってなんか虚しいな~。
25歳から26歳くらいの当時、私が常に支配されていた雑念です。
仕事から疲れて帰ってきて、夜半になると何度も頭の中に浮かんでは消えませんでした。
休日になって街を独りぶらついていると、幸せそうに手をつないでいるカップルや、集団の仲良しグループで楽しく騒いでいる姿が飛び込んで来て、
「20代後半にもなって、何か人生において大切なものが欠落しているのではないか」
という一つの疑念が脳裏から離れずに付きまといました。
そんな同じことの繰り返しに倦んでいた日々でしたが、26歳5月の下旬に変化が訪れました。
当時の私は通信制の大学に入学したばかりでした。
5月の末に、「スクーリング」といって、イベントホールに足を運んで、生で講義を受けながら、同じ通信学生たちと顔を合わせる機会が用意されていたのです。
その日は朝の9時から夜の8時まで一日通しで行われました。
会場は東京ビックサイトいう大型ホールで開催されたのですが、蓋を開けてみると、平均年齢40代くらいの老若男女交々の学生達で埋め尽くされていました。
人数にして表すとおよそ300名くらいでしょうか。
通信制の勉強方法というのは、自宅学習中心のスタイルなので、とにかく孤独の世界なのです。
初めてこれほどの多くの人間を目の当たりして、感嘆しました。
オフラインでの出逢いというものは新鮮だったのです。
私は会場の後部座席に座り、全体の様子を見渡しました。
一部友人同士だと思われるごく少数の学生層が隣同士で雑談を交わしているものの、全体の9割以上の学生達が初顔合わせで、知り合いもいないようでした。
もちろん私もその一人です。
心の中では、「これだけたくさんの学生がいるのだから、仲が良い友達が出来ればいいな」という思いでいっぱいでした。
18で初めて上京して大学に入学した当初の気持ちがよみがえります。
そして、均衡を破る瞬間が訪れました。
午前中の最後の授業で、「隣の席の人と自己紹介をしてください」という講師からの課題が与えられました。
これは千載一遇のチャンスだ!
私の胸はときめきました。
私が座っていた席の隣には誰も座っていなかったので、一番近くで私と同じように一人で座っていた学生とペアになり、自己紹介を交わすことになりました。
顔合わせしたのは、私より2つ年上の28歳の男性でした。
この自己紹介をきっかけに、その後の昼食も一緒に摂る流れになりました。
彼は大学卒業後に、正規職員として働かずに、趣味のバンド活動に傾注しながら、アルバイトで生計を立ててきたようです。
ところが、30歳間際になって、両親から、「いい加減に現実を見て、定職に就いた方がいい」とはっぱをかけられたそうですが、社会経験のない自分は門前払いになってしまう。
そんな危機感から、資格が取れて職に結びつくこの大学に入学してきたとのことでした。
彼とは意気投合して、午後の授業も一緒の席で受けることになりました。
午後になると、グループ活動の授業が増えて、さらに10人くらいの学生と話をする機会がありました。
18歳の高校を卒業したばかりの大学生から、還暦が近い定年間際の男性といったバックボーンが十人十色の学生達と、日常生活や勉強面についてのリアルな話を聴けました。
気がつけば、会場は300人近くの人間が挙って熱いトークを交わしていました。
ナイナイのお見合い番組のような光景です。
つい数時間前まで、名前も顔も知らない者同士の集合体で、一人一人が単独で過ごしていた光景が幻のようでした。
スクーリングを終えて分かったのは、多くの学生達には、
「誰かと仲良くなりたい、つながりたい」
という共通の思いがあったことです。
最初の一歩を踏み出すのは難しいものですが、「自己紹介」というコミュニケーションの自然なきっかけを講師が示してくれたことで、他人同士が一瞬で結びつくことができたのです。
仕事環境とは別世界の一日は、私にとって価値観や世界観の変革をもたらしました。
人って、ほんの少しのきっかけでモチベーションが上がったり、出逢いが深まることって多いですよね。
きっかけ一つで、一歩踏み出せれば平凡だった日常が大きく変化することってたくさんありますよね。
チャンスは待っているだけではなかなか訪れません。
しかしながら、日々の生活に不満や孤独を抱えている方ほど、それをバネにして大きな出逢いに巡り合えるきっかけを手にしやすいのです。
いくつになっても出逢いのきっかけはどこにでも溢れています。
みなさんが自分の人生を変えるきっかけに出逢えますように。
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