第31回「大学に居場所をなくしたある青年の話」その2
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大学三年になったN君は、ついに大学を休むようになりました。
はじめは単位を落としてはならない義務感テから躊躇っていましたが、思い切って一度サボってみたことで、吹っ切れたようです。
「あと一回くらいなら休んでも平気だろうな、まだ一回だし。」
休めば休むほど、大学から遠ざかっていって取り残されていくどうしようもない孤独感に支配されるようになります。
「N君最近学校来てないけど調子悪いの?みんな心配してるよ~、早く戻っておいでよ」
N君の葛藤をよそに、彼らは止まりませんでした。
度重なるメールと電話の着信音に、N君の繊細な心は限界へと近づいていました。
N君はその時、彼らの行動や人柄について私に言及はしませんでした。
「友達いないって言ってる割にはこんなにたくさんの人間がメール、電話してくれてんじゃん。なのにどうしてそこまで孤独を抱え込む必要があるんだろう」と、疑念を抱いていました。
その答えは後になってわかりました。
N君が投げかけたその一言に全てが凝縮されているのでした。
「俺、大学の友達誰もいないみたい」
結論から言うとN君はまた大学へ戻りました。
N君の中でまだ人を信じる心は完全に消えてなかったのです。
しかしそこに待っていたのは非情な現実でした。
あれだけN君のことを気にしてくれた友人たちも、N君が学校に戻れってきた途端、むしろよそよそしくなっていたのです。
あるクラスメートは、不敵な笑みでこう言いました。
N君、戻ってきたんだ。
N君学校が嫌いだから独りで家に引き篭もってたんだって(笑)
俺も休みて~よ。
もしも自分が学校ないし会社の生活が嫌になり、しばしの休息を経て復帰した時、そこにはまるで自分がいてもいなくても同じかのような空気が充満していたら、軽蔑の視線を浴びせられたら、どういう心境になるかは安易に想像できると思います。
N君が周りの人間に振り回されて、自分らしさを見失い、厭世観を強く抱くようになったのもいたしかたありません。
その時の心境をN君は次のように私に述べています。
どうせ自分の心の苦しみをわかってくれる人なんて誰もいないんだ。
でも心の中のどこかでまだ信じてしまっている自分がここにいる。
出来ることなら大学生活もう一度はじめからやり直りたい。
だとしたら自分が今できることはこの選択しかない。
必死に見て見ぬふりをしていたある問題にようやく答えが出たそうです。
その流れに身を任せた彼は、意を決して思いのたけを両親に告白したのです。
「俺、本気で大学やめたいと思ってる」
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