第79回「学歴・職歴コンプレックスが恋愛を阻む原因になっていたら」その1

実体験・人間考察コラム

前回、前々回と外見と性格にコンプレックスを抱いていることで、恋愛に消極的になっている方に対してのコラムをお送りしました。


“コンプレックス”シリーズの完結編は、学歴や職歴のコンプレックスによって恋愛に失望している方へのメッセージで締めくくります。


今までのコンプレックスシリーズの流れと同様に、今回のコラムテーマも私自身をモデルにして展開します。
  
まずは、大学時代に学歴コンプレックスに苛まれていたエピソードを紹介します。

以後主観による大学批判を組み込んで行きますが、あくまでも私の場合という前置きでご覧ください。



世間一般で言われるところの中堅大学出身の私ですが、愛校心や誇りなどは皆無でした。

出身大学の話題が出る度に陰鬱な気持ちになっていました。

学外の人間からは、話のネタとして「学生証を見せて欲しい」と、お願いされましたが、私にとっては嫌で仕方がありませんでした。

高校時代に撮った冴えない顔写真が添えられているこのカードは、他人には絶対に見せたくありませんでした。

実は学生証は常に携帯していたのですが、決まってこう答えるのです。

「あいにく今日は家に置いてきたんだ」

コンプレックスを抱えている様子を悟られないように、即席の嘘でその場を乗り切っていました。


そこまで大学に引け目を感じていたのは、「切望して進学した大学ではなかった」のが一番の理由でした。

進路選びの時期に、推薦入試で楽してそこそこのレベルの大学に現役で入学できる安全路線を第一前提にしていたため、ワンランク格上の大学を目指さなかった自責の念と後悔が、絶えず付きまといました。

大学生活そのものが想像していたものとは違っていたのもありますが、出身大学で自尊心を失ってしまう体験がすぐに訪れました。

第一に、出身大学に対しての周りの同級生や世間の大人達の反応が微妙でした。

「どこの大学に通っているのか」という話題になって、出身大学名を答えると、だいたいの反応は、

「あ、そうなんだ。あの東京にある大学ね」というような淡々とした切り返しで、次の話題に変わってしまう具合でした。

いわゆる中堅大学は、世間から見てもレベルが高いとも低いとも評価できないような微妙な位置に属する実態が浮き彫りになりました。

大学名による周囲の人間のイマイチな評価によって、出身大学に自信を持てなくなっている自分がいました。


第二に、学友のモチベーションの低さと愛校心の少なさが要因でもありました。

入学してすぐに知り合った大学の学科生達は、「本当はこの大学、滑り止めだったんだ」と、悲痛な表情で語ってくるのです。

就職活動が始まる3年の冬になると、それまでのらりくらりと過ごしてきた多くの同級生はリクルートスーツに身をまとい、会社訪問や面接試験に立ち向かうわけですが、50社以上不採用になるのはザラでした。

その時期の学内では、「内定」「学歴社会」というキーワードを軽はずみに口にしてはいけない空気が漂っていました。

周囲の同級生のほとんどは、社会の壁を前に、「なんで文系のこの大学になんて進学してしまったんだろう」と、悲観的になっている者ばかりでした。


そんな彼らのやつれた横顔を見る度に、私自身も「どうしてこの大学に入学してしまったのだろうか」という後悔と自責の念が強くなる一方でした。

第三に、周りの女子達は、よく「付き合うならば○○大生があこがれるよね~」とか、偏差値が高い有名大学名を挙げたりして、同級生など眼中にない様子を目の当たりにしました。

その様子から、とてもじゃないけれどもアプローチする気にすらなりませんでした。

インターネットの大手予備校サイトや受験書籍などで、ランク別に大学名が順列されている中、客観的に見て決して一流大学群とは言えない自分の大学名を見る度に、「○○大学に進学したかった」という、まさに女子が話題に出していた有名大学の名を心の中で唱えていました。

「自分の大学の女子たちに恋愛を求めるのは無理だ」と、大学1年の秋にして早くも結論を出した私は、外に出逢いを求めて“お嬢様が多い”と評判の女子大の学園祭に足を運んでみたりもしました。

しかしながら期待は打ち砕かれて、誰かから声を掛けられたりとか、こちらから気になった女性に声をかける勇気なんて全くありませんでした。

学内の女子にすら積極的に話しかけられないのですから、洗礼された雰囲気を醸し出している他校の女性には、いっそうのこと声をかけることのハードルが高すぎたのです。

そんな臆病な私をよそに、気がつけば、他大学の男子は自分が「かわいい」と思った模擬店の女子に絡んでいて、挙句の果てが携帯の番号やアドレス交換を交わしている場面が目に入ってきたのです。

結局収穫はないまま家路に着き、「どこにいっても今の自分には恋人なんてできるはずがない」と自虐的になるだけでした。

18歳の私は、「自分よりも高学歴の女性が自分なんか眼中に入れてくれるはずがないんだ」なんて勝手に決め付けていました。

「学歴コンプレックスによって人生を満喫できていない」

何もかも上手くいかない原因を大学に擦りつけていました。

時間さえあれば「○○大学にさえ進学していればこんな生活にはなっていなかった」という風に、高校時代に本気で目指さなかった難関大学へ進学していた「IFストーリー」を想像しながら、現実逃避を繰り返していました。


今振り返ってみれば、この時期病んでいたのには、学歴コンプレックスだけではなくて、引っ込み思案な性格や、まだ完全に解消されていなかった外見の劣等感とが絡み合っていて、複合的要素から生き方に自信を持つことができなかったのです。

続く

Posted by TAKA