第185回「人生はやり直せるかを実践した結果-その8-」
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大学の前期講義が終わりを迎えたその日に、現役教員として教鞭を執っているOB・OGによる、教職志望者のための説明会が開かれました。
教育学を専攻して、教職に興味を持っていた自分は、ここぞとばかりに参加しました。
3人の既卒生がそれぞれの教員生活の実態や現在の心境を話してくれて、その場で質問に答えてくれるという内容でした。
新卒後にすぐ教職に就いた者もいれば、一度民間企業に就職してから教員への夢を諦めきれずに、転職された方もいました。
3人に共通していたのは、教員生活は想像以上に大変であるということ、大学生活がいかに自由で時間があって恵まれていたかといった声でした。
仕事の量が膨大で、求められる役割も多く、毎日寸暇を惜しみながら必死に過ごされている様子でした。
教員はキツイという情報は日常的に耳にしていましたし、私も最初の大学4年次に、教育実習を受けていたので、その世界はイメージ出来ていましたが、
まだ就職して間もない彼らの声は、生々しさが違いました。
最後の質問コーナーになり、私は思わず手を挙げて一つの問いを投げかけました。
在学中に何か資格を取りましたか?
漢検準1級試験を終えたばかりの私が、率直に聴きたかった質問でした。
教員になるような人間が在学中にどのような資格に挑戦していたのか、「資格の時代」と言われていただけに、どのような資格観を持っているのかを知りたかったのです。
4月の入学当初、「簿記1級」や「司法書士」といった難関資格に挑戦するという学生達の会話が記憶に残っていたのも手伝って、彼らの答えに期待をしました。
ところが、返ってきた答えは意外なものでした。
「正直言うと、私は運転免許以外の資格を持っていないことがコンプレックスです」
民間企業をリタイアして、高校の社会科教師に転職したOBが苦笑いを浮かべつつこう答えました。
「学生時代はサイゼリアで4年間バイトに明け暮れていたので、資格は何も取っていません」
「私は、高校時代に取った英検2級ならありますが、資格とは言えないレベルなので、持っていません」
新卒あがりの高校の英語教師2人がそう答えました。
3人の回答を聴いていた他の学生達も「まさか」というようなリアクションでざわついていました。
すかさずその2人に対して、
「TOEICは受けていないのですか?」
という追加質問をした他学生がいたほどです。
質問を終えた後に、私は彼らとの違いを意識していました。
資格は取得していないものの唯一無二の教員免許を活かして正職員として教職に就いた3人。
いくつかの資格は取得したものの、大学を卒業した後に再び学生という道を選んだ自分。
社会人という未知のフィールドに立つ彼らと、やり直しを図るためにここに存在している私とでは、明確な立ち位置の違いがありました。
私は彼らとは総合学力では到底及ばないし、同じ道は歩めない。
この道を選んだ自分にしかできない生き方を進んでいこう。
彼らのおかげで、私がここにいる理由、ここにやってきた目的を再認識させられました。
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