第285回「孤独に震えていた美少女がニコ生主という世界から卒業するまで その2」
鎌倉のショップ「雅」のマスコットキャラクターみやびちゃん♪
※前回はこちらから
ここなら誰もが自分を受け入れてくれて、褒めちぎってくれる。
罵倒されることはないし、無視されることもない。
学校で独りぼっちの自分を知る人間は皆無だから、気の済むままに理想的なキャラを演じられる。
清子ちゃんにとっては、ニコ生の世界は初めて自分が見つけた晴れ舞台でした。
そんな生活が半年以上も続いていましたが、ある時終わりが訪れました。
彼女に初めての彼氏が出来たからです。
出逢いのきっかけはもちろんネットでした。
ニコ生主の世界とは別に、ネットゲームで知り合った男性達数人とLINE交換をするようになり、その中で最も気が合った男性とオフラインの世界で逢ったのです。
7つ年上の彼に一目ぼれされたようで、猛烈なアプローチの末に押しに負けて交際を開始しました。
1000人以上の男性からネット回線を通じて、ちやほやされていた彼女でしたが、リアルタイムでの彼氏との交流によって、変化が訪れました。
人に愛される喜びを知ったと書けば、ハッピーエンドで終わるのですが、その反対の道を辿るようになったのです。
彼氏は彼女に束縛を求めました。
ニコ生主での活動を知るや否や、自分以外の男性とやり取りをするなと禁止を強要しました。
後ろめたさはありましたが、特別な彼氏のために、あれほど大事にしていた拠点であるコミュニティを閉鎖しました。
ネットの別れというものは唐突に訪れるものです。
彼女の登場を楽しみにしていた男性陣からすれば、何の前触れもなく去ってしまった彼女の理由などは知る由もなかったでしょう。
終わりというものはいつも突然で、あっけないものです。
その後の彼女はどうなったのかと言うと、わずか2か月で初彼氏とは別れてしまいました。
彼氏だけを見るように切り替えた途端に、当の本人は他に好きな女性を作って、浮気をしたのでした。
一人取り残された彼女は、また空虚な高校生活だけに没頭するようになります。
それでも彼女はニコ生の世界には戻りませんでした。
別れを告げられたという結果に終わりましたが、生身の男性との恋愛の味を知ったからです。
彼女にとってはバーチャルからリアルの男性関係に、優先順位が上がっていたのです。
それから彼女は以前やり取りしていたネットゲームで知り合った男性とのやり取りを再開して、間もなく求愛されました。
そして、交際するようになり、またすぐに別れて、またネットで知り合った男性と付き合っては破局するという関係を繰り返しました。
振り返ってみればいつも短期間で男性側から去られてしまったと言うのです。
彼女は自分に自信がなくて、甘える体験を重ねてこなかっただけに、男性の言いなりになっていたのですが、
そんな彼女では満たされずに、新鮮味を感じられなくなった男性は、別の女性を作って離れて行くと言う末路を辿りました。
愛されたいと願えば願うほど、愛は遠ざかって行きました。
そんな彼女は絶望の淵に立たされていたわけではありません。
また新しい転機が訪れます。
今年の春、2年制の保育士養成学校を卒業して、保育士として新社会人生活に進みました。
彼女は今、クラスの担当を持ち、数十名の子ども達を相手に充実した日々を過ごしています。
愛される喜びを渇望していた彼女でしたが、この世界で子ども達を愛する喜びを知ったのです。
子ども達との日常を話す彼女の表情は、活き活きとしていました。
インナーチャイルドという言葉をご存知でしょうか。
直訳すると「内なる子ども」という意味ですが、子どもの頃の記憶や感情、体験を、
大人になっても引きずり続けている、影響を受けているというものです。
彼女は無意識ながらもインナーチャイルドを解放するため、自分の満たされなかった幼少時代を昇華するために、
目の前の子ども達に愛を配っているようにも感じさせられました。
愛を与えれば、必要とする人間から愛は返ってくるものです。
彼女は今でも人間関係でつまずきや生きづらさを感じていますが、まだ若くて可能性に溢れています。
彼女の心が満たされて行けば、もうバーチャルの世界に救いを求めることもなくなるでしょう。
子ども達に癒されながら、少しずつ前を向いて新しい人生を築き上げています。
愛のために、少しずつ着実に自分を再構築しているのです。
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