第185回「人生はやり直せるかを実践した結果<2回目の大学生活>-その13-」
※前回はこちら から
大学の授業が終わった後は、図書館でケビンの日本語自習の手伝いというコースから始まりました。
夕方になると、新宿と高田馬場の界隈を漫遊しました。
まるで私が得られなかった大学の4年間を取り戻すかのような充実した時間でした。
しかし、楽しい時間というものは長くは続かないものです。
8月下旬、あっという間にケビン達留学生との別れの時が訪れました。
短期留学の宿命です。
私は、ケビン以外にも共に過ごした留学生達やボランティア、先生達とは家族のような感情が芽生えつつあった時期でした。
最後の授業では、全員で記念写真を撮り、留学生達一人一人が日本の思い出を発表しました。
ケビンは一か月前に逢った時よりも見違えるように日本語力が向上していました。
教育というものは子ども達の世界だけではありません。
二十歳を過ぎた大人だって確かに成長を遂げるのです。
TAKA氏さん、ありがとう。ほんとうに楽しかったです。
ケビンとは、初対面で固い握手を交わしたあの時と同じように、がっちり握手をしました。
日焼けの肌に、はにかむケビンの無邪気な笑顔を目の当たりにすると、思わず涙腺が緩みました。
そして、この日を持ってケビンをはじめとしたメンバー全員とは解散しました。
夏の終わりの出来事でした。
ケビンからは、帰国後すぐに一通のメールが届きました。
TAKA氏さん。日本での全ての思い出をありがとうございます。
私はますます日本が好きになりました。
必ず戻ります。
また一緒に観光しましょう。
またね。
ケビン
とてもシンプルな日本語のメールでしたが、私の心にこれほど響く言葉はありませんでした。
あの時、自分の気持ちに正直に、日本語授業ボランティアの道を選んで本当に良かった。
好奇心に従って、運命を変えたい思いで一歩踏み出した自分を初めて誇らしく思えました。
私はその後大学院に進学して、延べ3年間日本語ボランティアの経験を積むことになります。
二度目の大学入学前には、想像もしない新しい世界でした。
ケビンはそれから2年後、本当に日本に戻ってきました。
今度は留学生でも、観光のためでもなくて、ALT(外国語指導助手)という中学生を対象とした英語の講師として、仕事のために来日したのです。
大学でつながった縁から新しい世界が広がったのです。
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