第218回「トラウマが生まれた生育暦から恋愛が上手くいかないとしたら」

2015年12月1日上手くいかない人生


はぁ、今回もまた上手くいかなかった。

いつも同じようなタイプの人間を好きになっては、空回りして辛い恋を繰り返してしまう。

そうやって、失敗や挫折を繰り返していると、まるで自分は幸せな恋愛を築ける資格がないようなちっぽけな人間に思えて仕方がない。

なんてダメなヤツなんだろう。


最近では、恋愛に失敗してしまったことで、この世の全てが終わったような絶望の淵に立たされたり、幸せになるために恋愛を渇望しているものの、いざそのチャンスをつかんだ後に、

「自分が幸せになってはいけない。いつかこの幸せが逃げていってしまう」

という強迫観念に悩み続けていらっしゃる方の声が目立っています。

恋愛につまずいて明日を見失っている方々と共に伴走する中で、私自身もその要因を様々な角度から研究し続けてきました。

結果として叶わぬ恋や、失敗の連続に苦しんでいる相談者様の声を集約すると、生育暦が影響していると感じることが多いのです。

幼少時代の家庭環境のトラウマや、人間関係のトラブルによって形成された価値観や常識を、大人になった今でも引きずり続けていると切に感じることがあります。

私は子育て世代の保護者支援以外にも、これまで10年ほど乳幼児から高校生までの心理に直接携わる仕事を続けてきました。

まさに幼少時代に育ってきた環境によって、不登校につながったり、窃盗行為の常習犯になったり、夜の街に入り浸るなど、レールを外れてしまう姿を多数目にしてきました。

両親の離婚や虐待による子どもへの影響は、成長過程において如実に表れます。

幼い時期に、暴力を受けたり、ほったらかしにされ続けるなどして、愛着形成をしっかりと結ぶことが出来なかった児童は、様々な生き辛さを抱え込むようになるのです。

リストカットやアームカットや自殺未遂を繰り返してしまうような子ども達は決して少なくはありません。

若くして、統合失調症やうつ病を発症してしまう高校生もいれば、親の愛情を求めて出会い系に手を染めて、とっかえひっかえ男性と性交渉を行い、子どもを身ごもり、養育できないまま堕胎するか養子に出してしまうという哀しいサイクルを迎える人間もいるのです。

みなさんは、アダルトチルドレンという言葉を聴いたことがあるでしょうか。

幼少時代の家庭環境に大きく影響しているキーワードです。

私は大学時代に始めて耳にした時に、「大人になりきれていない子どものような特徴の人間」という意味だと勘違いしていました。

本来の意味は次のようなものです。

①親が本来の子供をサポートする機能を果たせなかった家庭で育ったことから、

②大人になっても自己評価が低く、

③周囲からの評価(態度や表情など非言語的なものに特に)に左右されて極端に不安になる、という状態のことを言う。

ACとは – OCN より

機能不全家族で育つ子どもは、他者はもちろん自分自身を愛する方法を学ぶことは難しいとされています。

物心がついたときに、偏りのある愛し方、愛され方をインプットしてしまいそれが大人になってからの恋愛に影響を及ぼしてしまうのです(あなたはアダルトチルドレン? – ハフィントンポスト )。

実際にアダルトチルドレンと自覚している方々の声も時々うかがうようになりました。

幼少時代から母親や父親から支配的な生活を強いられてきた人間は、大人になった今でも人間関係の距離感を上手くつかむことが出来ずに、生き辛さを抱え込んでしまうという後遺症のような苦しみを持っているのです。

いじめに遭ったり、信頼していた人間に見捨てられるような悲痛な体験が続くと、

「自分がこの先幸せになれたとしても、またかつてのように離れていって、一人ぼっちになってしまうのではないか」

という恐怖感が拭えないのは、忘れられない凄惨な出来事が深層心理に刻まれているからなのです。

このような過去のトラウマを抱え続けていると、おのずと不幸にハマってしまうような人間に恋焦がれてしまったり、相手の顔色をうかがうばかりで、自分の持ち味を発揮できずに、想像していたような上手くいかない恋愛に進んでいってしまうパターンが多いのです。

どれだけ他者から「気にするなよ」とか、「考えすぎだよ」と励まされても、返って「自分はやっぱりおかしい人間なのだろうか」と、プレッシャーが増してしまう場合もあるのです。

私は精神科医ではないので、継続的に専門的な治療を施すことなどは出来ません。

私に出来ることは、ただただ話をうかがうか、このようなコラムを通して、「過去はもう終わりました。あなたなら大丈夫です」と伝え続けることくらいです。

過去に培った常識や価値観というものは一朝一夕で転換出来るものではありません。

けれども、私は人々の可能性を信じています。

アダルトチルドレンとして、長年生き辛さを感じてこられた相談者様にも一筋の光が訪れています。

過去も含めて全部受け入れてくれるパートナーの存在や、身の丈にあった職場環境に恵まれたことで、少しずつ着実に人生が躍動しています。

幼少時代に実親から離れて養子として生きることになったものの、成人後に最愛の伴侶と家庭を築き、子どもも産まれて幸せに生きている人間もいます。

小学校時代からいじめられっ子で、成績がオール1の落ちこぼれだった人間が学問の面白さに気づいて、国立大学院まで進学した後に教師になった宮本延春さんや、

幼少時代に両親が離婚して、壮絶ないじめにもめげずに、ボクシングの道で頂点を極めたWBC世界フライ級チャンピオンの内藤大祐さんのような先輩もいます。

そういう希望を見てきたからこそ私は言うのです。

あなたを必要とする人間が必ずいるし、あなたの理解者に巡りあれば、考え方も少しずつ変化してくるのです。

過去と他人は変えられないけれども、今、そしてこれからの自分の人生は変えられる。

そう唱え続けています。

2015年12月1日

Posted by TAKA