第33回「本気で死を選ぼうとしたその先には-片思いから壊れていく心」その4

2015年12月1日実体験・人間考察コラム

私は彼女に自分の素直な気持ちを告げました。
 
近い将来イメージしていたワンシーンでしたが、ついにこの時具現化したのです。

追いつめられた私には、ステップを踏んで満を持して告白をする余裕などありませんでした。

私が先輩の一言で全ての判断基準を見失ってしまったように、突然のその言葉に彼女は混乱を隠せないようでした。

かなり意外だよ!本当に言っているの?っていうかそんな風に思ってくれていたなんて知らなかったよ。

 
彼女が本音を話すことによって、私の口からも同じように予想外な発言が待っていようとは、自分のことをそのように捉えていたとは夢にも思っていなかったようです。
    

私が彼女を好きになってから守り続けてきた想いを吐露することで、彼女へのフラストレーションや猜疑心は、スーーッと引いていきました。


言えたぞ!!

   

彼女が彼氏がいようと、先輩と密に連絡をしていようと、そんなことは些事に過ぎなくなるほど私の心は激昂していました。

おそらく私の中で、包み隠して自分が言いたかった切な想いを告げられた行動と全てを聞いた上で、自分のほうが彼女のよき理解者としてふさわしいと認識した自信で心の暗雲が吹き飛んでいったのだと思います。

彼女はしばらく考えこんだ後、こう述べました。

本当に意外だったので、混乱している。まだお互いのことを知っていないし、正直早いよ。

もっと遊んだりしてみないと・・・・・・。

 
YESともNoとも言えぬ絶妙な返答をでした。

私の中には「告白成功」「玉砕」という形よりも、告白できた気持ちよさで、小躍りしたい気分でした。

そして次の瞬間には、先ほどまで周章狼狽していた自分が嘘のように、安堵の気持ちが広まりました。

これからだ。まだ大丈夫。自分を知ってもらえばきっとうまくいくはずだ。正直に言ってよかった。

 
彼女の言葉をうのみにした私は、本質から目を逸らして都合の良い風に解釈していました。

抑圧されたもう一人の自分を見てみぬふりを続けながら。

それからは、お互い胸の内を吐露したことで、以前よりも増して電話で話したり二人で遊ぶ機会は増えていきました。

そしてこれまで話したことがなかったお互いの私生活や将来の夢、人間関係の悩みなども語らうようになり、心の距離は日を重ねる毎に近づいていくように感じていました。

彼女と会うたびに、自分の中の気持ちも強くなっていって、同時に「早く自分だけの彼女になってほしい願望」がグングン芽生えていくのを止められませんでした。
    

そんな関係が二ヶ月も続いた時、彼女と6回目のドライブの最中に、ついに向き合わなければならない現実を再認識される出来事がありました。

この間彼氏と会ったとき、「結婚してくれ」って言われたんだ。

動揺を隠せずにはいられない新事実でした。
    

運転の最中にも関わらず淡々とそう告げてくる彼女をよそに、私は現実を振り返りました。
    

彼女には付き合っている彼氏がいた。それも付き合って一年も経っていて、年も七つも離れた大人の男性が。   

告白したあの日から、免れない事実だとは痛いほどわかっていました。

そんな現実から目を背けて、認めたくなく向き合おうとしていない自分がいました。

本当に彼氏がいるのだろうか。実際に会ってもいないし、実は幻だったなんてことはないだろうか。

先輩から初めて彼氏の存在を告知された時も、彼女の口から真実を聞き出したあの瞬間も、分かってはいるのだけど、否定しなくてはいられない心の葛藤が苦しかったのです。

目には見えない恋人を肯定してしまったら、彼女にとって自分は男としても人としても受け入れられない微弱なポジションに置かれてしまうような危惧が胸を支配していたのです。

私は彼女に自分が必要である存在として傍にい続けるために必死でした。

そしてせっかく出会えて好きになれたからこそ、失うことが何よりも怖かったのです。

私の中の彼氏のイメージは、年上で男らしく彼女をぐんぐん引っ張っていく存在で、自分とは正反対の器用な人間で、仕事も遊びもスマートにこなす色気のある人間のように描いていました。

 

2015年12月1日

Posted by TAKA