第90回「恋愛のチャンスがあるのに自信を失っているイケメンの話」その2
前回に引き続き、自分の魅力に気付かなかった私の友人が、一念発起して恋人ができるまでを描いた実話の後編を語って行きます。
イケメンだけれども持ち前の内向的な性格から、「俺なんて一生彼女ができない」という口癖のM君。
前編では、目の前に訪れている絶好のチャンスに対して、自信のなさからみすみす逃してしまい、思い詰めている彼の苦悩までを描きました。
後編はそんな彼が失敗の連続で、このままではいけないと一念発起した後のエピソードを描きます。
一つ夏の恋を終えたM君には、秋の到来とともに新しく好きな女性が現れました。
同じサークルに所属している同級生で、Tさんという女性でした。
Tさんは今まで出逢った女性の中で一番自然に話ができるようで、徐々に惹かれていったようです。
Tさんは今まで男性と一度も付き合ったことがなくて、そんな純粋なところにも魅力を感じていたようです。
サークル活動だけではなくて、プライベートで仲良しグループで集まる際にも必ず傍にいたTさんと、どんどん心の距離を近づいていきました。
Tさんとはまるで男友達のように気兼ねなく自然体で接することができて、「俺が彼女の初めての男になりたい」と、いつも私に夢を語っていました。
しかし、いよいよの場面を前に、またあの習性が顔を出してしまうのです。
「でも、告白して断られたら気まずいし、もう俺サークルにいられなくなるよ」
M君は夏に振られてから会話すらままならなくなった女性との過去がしこりになっているようでした。
そんなM君に対して、私をはじめ男女を含んだサークルメンバー達は異口同音に励行しました。
「M君は誰が見てもかっこいいし、自信さえ持てば絶対に上手くいくよ」
いくら唱え続けても、当の本人は、「俺なんかじゃ絶対に振られるよ」と、ネガティブシンキングから解放されることはありませんでした。
進展のないまま大学1年の冬を迎えたある晩のことです。
私はM君とともに過ごしていたのですが、 「ついに今日こそ告白を決意してきた。今から電話して告る!」と私に意気込みを伝えてきました。
クリスマスが目前に迫った年の瀬の夜です。
それまで何十回と同じ決意表明を聴いていたので、その都度行動を起こせずに頓挫してきたM君に対して、今回も話し半分に聴いていました。
ところが、今回のM君は法螺ではなく、おもむろに携帯を取り出して、本当にTさんに電話をかけ始めたのです。
ついに眠れる獅子が目覚めたかと、俄然応援モードに切り替わりましたが、そんな私をよそに、M君は告白などする様子もなく、Tさんといつものような調子で、単なる世間話を交わして電話を終えました。
M君は、二つ折り携帯を閉じた後に、ため息をつきながら、「やっぱり俺チキンだよ。実際にTさんの声を聴いたら緊張しすぎで告ることなんてできなかった。だからイイ人止まりなんだよね」と自虐を重ねていました。
M君にとっては、同じサークルメンバーでもあるTさんに告白するのは、あまりにもハードルが高かったようです。
そんな恋愛に一歩を踏み出せなかったM君に、ついに転機が訪れました。
M君は大学1年が終わる3月の下旬になって、Tさんに告白しました。
私は彼の事後報告で知りました。
何の前触れもなかったので青天の霹靂でしたが、本当にアクションを起こしたようです。
実に長かった道のりでしたが、M君の中で、「このままの自分じゃいけない」という思いが溢れて制御できなくなったようです。
結果としては成就せずに、「これからもいい友達でいましょう」と断れてしまったようです。
しかし、M君は告白に失敗したことでますますダメ人間になるどころか、弱い自分に打ち克って、思い切って行動できた自分に自信が持てたようです。
彼は19歳にして初めて自分から告白をしたことで、行動することの大切さを学び取ったのです。
それから間もなくして、M君には彼女ができました。
サークルの友達の紹介で知り合った女子ですが、お互い意気投合してすぐに交際に至ったようです。
今までの道程が嘘のようでした。
「自分に自信がなくて、女性が何を考えているのかがわからない」と弱音を吐いていた彼はそこにいませんでした。
M君は振り返ってみて、「あれだけ彼女を作るのが難しいと思っていたのが嘘のようだよ」と私に告げてきました。
M君は男としての自信にみなぎっているようでした。
自信がないために恋愛に消極的になっている方は、もしかしたら行動する前から最悪のシチュエーションを想定してしまい、行動を起こせずにいるのかもしれません。
また過去に傷ついた体験があって、動くのが怖くなっているかもしれません。
それでも、「あの人と付き合いたい」「変わりたい」という葛藤から、悶々とした日々を過ごされているのではないでしょうか。
「俺なんか、私なんか」と卑屈になっていたとしても、みなさんだからこそ持っている個性や魅力が必ずあるはずなんです。
ぜひ、想像の世界に溺れずに、一歩踏み出してみてください。
みんなそんなあなたを後ろから応援しています。
次はあなたの番です。
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