第60回「振られたショックから立ち直れない-愛憎から相手を許せた暁には」

失恋した心に贈る

大好きだった人に振られてしまった時、言葉では表せないくらいの衝撃ですよね。
 
片思い失恋であれ、交際していた恋人との破局であれ、「別れ」という最も受け入れ難くない現実を突き付けられた後に残されるのは絶望と孤独でしょう。

もしかしたら、好きだったあの人は、自分を振ってから間もなくして、新しい恋人や好きな人ができてしまったかもしれません。

相手のことを忘れたくても忘れられない、でももうあの人の心は戻ってこない。

アインシュタインの「相対性理論」ではありませんが、振られた側と振った側によってこれほど時間の流れの速度が異なるだなんて、振られた側からすれば、あまりにも理不尽すぎるこの現実から、相手に対して愛憎の気持ちが芽生えてくるかもしれません。
 

自分だけこんなに苦しんでいるのに、あれだけ好きになったのに、そんな自分を拒絶した相手が許せない!


不完全燃焼のまま強制終了させられてしまった想いが行き場を失って、憎悪の感情に支配される場合もあるでしょう。

相手に対する想いが強ければ強いほど、裏切られたと感じるようなショックから、憎しみの念で心がいっぱいになるかもしれません。

 
自分だけ取り残されて、未来に進めずに塗炭の苦しみを味わっているのに、幸せそうに別の人生を過ごしている相手が許せない!!

相手も自分と同じ目に遭えばいいんだ!!



目を背けていた猜疑心や愛憎の気持ちが、マグマのように爆発して、相手の不幸を願うような感情に苛まれるかもしれません。


それでもやっぱり、忘れられないんだ。



相手を恨むことで一瞬気は紛れるものの、結局のところますます孤独感や虚無感が募るものです。


「好き」の反対は「嫌い」ではなく、「無関心」だとよく言われていますが、そうやって相手に対して意識を巡らせている限り、相手に対する想いが完全に拭いきれていないんですよね。


かくいう私も、度重なる失恋の中で、自分を振った相手に対して憎しみの感情を抱いてしまったケースが何度かありました。

認めたくなかった自分の恐ろしい感情でしたが、所謂ストーカーや、恋愛のもつれで殺人に至ってしまった加害者の気持ちが共感できるような錯覚にも陥りました。

理性だけが自分を抑制できましたが、一歩間違えれば、彼らのように社会の道理から外れてしまう行動を取ってしまうかもしれず、狂暴化した自分を律するのに必死でした。

そんな汚れた自分を周囲の人間に見せるわけにはいきません。

自分はなんて最低な人間なんだろうと、自己卑下を繰り返してきたものです。


振られた側だけがなんでこんなに悲しい思いをしなければならないんだ。
 
振った側の人間だけが充実した世界に勝手に進んでいて、自分がみじめで仕方がない。


こんなことなら、あの人に出逢えなければ良かったのに。


告白なんてしなければよかった。



ここで一旦休憩です。

人間不信になったり、自信喪失しているみなさんに対して、贈りたい言葉があります。


それは、自分を振った人間も、今まさに苦しんでいる最中なのかもしれないことです。


え!?自分と一緒にいるのが嫌だったから、好きではないから、離れたくて、振ってきたはずなのに、自分の思い通りになった人間がなんで自分の決断に苦悶する必要があるんだよ。そんなわけないでしょう。


振られてしまった側にとっては、俄かには信じられない言葉に聴こえるかもしれません。


振ってしまった側、別れを告げた側も、自分の出した答えに責任を持つために、一人で必死に闘っているかもしれないのです。
 

一般的に振った側は、答えを出す前までに悩みに悩んで、相手の人間性を冷静に分析したりして、「この人とは合わない」というような結論に達するわけですが、後になって、「やっぱり自分が選んだ答えは間違っていた」と気づくパターンもあるのです。

その時、自分にとって最適だと思われる答えを導き出しても、離れてみて相手の大切さに気付いたり、実は自分の感情が一時的なもので、絶対的ではなかったことに後になって分かることもあるのです。

それから新しい出会いの中で、「やっぱりあの人が一番自分に合っていたんだな」という具合に、しばしの時間が流れた後になって芽生える気持ちもあるのです。
 

自分を好きになってくれた相手を傷つけてしまった罪悪感から、自責の念で胸が支配されているのかもしれません。

振られた人間からは、想像がつきにくいものですが、告白を断った後、振った後に、相手の態度が一変して冷たくなったり、よそよそしくなるのには、そういった身辺整理が巡っている最中であることもあるのです。

こんなときに以前のようなテンションで迫られたら、振ってしまった罪悪感がますます募ってしまって、もう本当に関わりたくなくなってしまい、復縁や再告白などのセカンドチャンスが潰えてしまうのです。

あなたもあなたで、これ以上の苦しみはないというほどの苦痛を味わったでしょう。

でも、そんなあなたの想いを拒絶してしまったあの人も、態度には出さなくても、一人で苦しんでいることを理解してあげてみませんか。

自分を好きになってくれた人、一度でも心を通わせ合って交際することができた相手を拒絶するのは辛いものなのです。

自分を納得させるために、相手に諦めてもらうために、鬼のように心を冷徹にせざるを得ないのです。

また、自分から振った側は、相手を恨んだり、憎んだりせずに、どうか相手には幸せになってもらいたいと切に願うものです。

それでも、許せないと言うならば、私からかけられるアドバイスはありません。
 
一時的な感情ならともかく、半年、一年と、長い間絶えず相手への憎しみが消えないのならば、恋愛感情とは別次元の問題なのかもしれません。

自尊心の毀損によって、相手を不幸に陥れることが自分のプライドを満たす術になっているのです。

そんな歪な感情からは救いはなく、破滅への道を辿っている現実に気づいていただきたいです。


人は誰もが完璧な存在ではありません。

失敗もありますし、その時は良いと思っていても、後悔することもあります。

でも、気付いたその日から、どちらかが歩み寄れば、生まれ変わります。


自分を振ったあの人は、決してあなたには態度や言葉には出さないかもしれません。


そんなあの人を許せてあげられたその日から、お互いの人生が変わります。
 
あなたが相手を許せた時に、相手もあなたによって救われます。

心の底からあの人を許してあげることができた時、新しい未来が切り開けます。

 

Posted by TAKA