第304回「渋谷ハロウィン狂騒曲|仮装という魔法が引き出す『承認欲求』と『集団心理』」

2026年8月16日

10月31日のハロウィン。

近年、日本国内でもすっかり一大イベントとして定着しましたが、皆様はいかがお過ごしだったでしょうか。

連日ニュースでも報じられている通り、東京・渋谷の街はまさに「お祭り騒ぎ」を超えた異様な熱気に包まれていました。

マナー問題や主催者不在による無秩序な空間、一部の暴徒化など、ネガティブな側面が世界中に発信される事態となりましたが、実は私もあの日、偶然にもあの狂騒の現場に身を投じていた一人です。

普段は気の置けない少人数のコミュニティで静かに過ごすことを好む私にとって、この大群衆と喧騒はまさに別世界でした。

今回は仮装する側ではなく、あくまで「一般の観察者」としての視点から、現場のリアルな空気とそこで垣間見えた心理についてまとめてみました。

2013年頃にさかのぼります。

■ 圧倒的な熱気と「注目を浴びたい」オーラのうねり

時刻は18時30分から21時頃。

渋谷近くの大学の学園祭での講演会に参加した後輩と別れ、一人で立ち寄った際の約2時間半の滞在です。

昼間の電車内でもすでに仮装姿は散見されましたが、夜の渋谷は桁違いでした。

スクランブル交差点からセンター街へと足を踏み入れると、たちまちその熱気に飲み込まれそうになります。

見渡す限りの「人、人、人」。時間が深まるにつれ、止めどなく仮装した人々が押し寄せてきます。

リアルなゾンビメイクを施した若い女性たちだけでなく、当時流行っていた『ラブライブ!』や『ワンピース』のエースといったキャラクターコスプレで闊歩する男女の姿。

「目立ちたい!」「注目を浴びたい!」という無言のオーラが、空間全体からビンビンと伝わってきます。

全体的に10代後半から20代前半の若年層が中心という印象でした。

■ 負傷と隣り合わせのカオスな空間

外国人によるミスタービーンの仮装、女装男子、男装女子、着ぐるみなど、現場はとにかく「なんでもあり」。

右を見ても左を見ても仮装だらけです。

あまりの混雑具合に歩くことすらままならず、行動範囲はハチ公前周辺に限られました。

私は肩にボストンバッグを提げていましたが、ひっきりなしに通行人とぶつかり、「鞄が破損するのではないか」「足を踏まれるのではないか」と常に危機感と隣り合わせの状態でした。

「どけどけどけ~い!」という掛け声と共に突進してくるゾンビ男子グループや、肩車をしながら笛を吹いて注目を集める女装男子など、みんなハイテンションそのものです。

幸い私は無傷で抜け出せましたが、あそこに一晩中いたらどうなっていたか分かりません。

■ コミュニケーションの壁を破壊する「仮装の魔法」

そんなカオスな状況の中で最も際立っていたのは、初対面同士でも一瞬で意気投合できる異様なムードです。

私も10組以上の仮装者と記念撮影をしましたが、仮装者同士はさらに親密に盛り上がっていました。

  • 目と目が合えば交流が始まる:「写真を撮らせてください」という合言葉が至る所で木霊し、人類みな兄弟と言わんばかりの打ち解けぶり。
  • 同じキャラ同士の謎の連帯感:同じ仮装の人間を見つけると興奮度はMAXに。昔からの親友のようにはしゃぎながらトークを交わす。
  • 言葉不要のハイタッチ:すれ違った瞬間に無言でハイタッチを交わし、そのまま即座に写真撮影へ展開する。

普段の日常生活において、見ず知らずの他人に突然声をかけられ、快く応じることなどまずあり得ません。

「仮装」という共通の仮面を被ることで、警戒心が完全に解け、コミュニケーションのハードルが破壊されている特殊な世界がそこにはありました。

■ インスタントな出会いを楽しむ若者たち

当然、この環境は「ナンパ」などの出会いを目的とする層にとっても絶好のシチュエーションです。

日常生活では声をかけて無視されるのが当たり前ですが、この日の渋谷では誰一人としてスルーしません。

仮装した肉食系男子たちは、次から次へと可愛い女性たちに声をかけ、勢いに任せて連絡先を交換していました。

一方で、女性陣もただ待っているだけではありません。

女子高生の仮装組は、自らイケメン仮装者にキャッキャと声をかけて撮影をお願いし、「あの人超イケメンだったよね~」と仲間内で品評会を楽しんでいました。

撮影後はすぐにLINEやXにアップして報告し合うなど、インスタントな出会いを結びつける空間として見事に機能していました。

■ まとめ:狂騒の根底にある「承認欲求」

「いつもとは違う自分になって、新しい行動を起こしたい」
「自分と似た人間に出会いたい」
「人に認められたい」
「みんなで集まれば怖くない」

これほどの社会的影響を見ると、来年以降さらに規模が拡大し、何らかのリスクが上がる懸念は拭えません。

しかし、あの夜の渋谷には、集団心理と承認欲求に突き動かされる若者たちの「生の姿」が確かに存在していました。

いつもの静かな日常へと戻る帰路の中、人間の持つ根源的な欲求のエネルギーの凄まじさを、身をもって考えさせられた一夜となりました。

投稿者プロフィール

たか
たか
たかさん(公認心理師 )

恋愛や人間関係で悩み、自分を見失っている方に向けた心理コラムを22年間執筆・発信。

メールや通話による1対1の心理カウンセリングは20年以上継続し、累計5,000件以上の相談実績を持つ。

大手ニュースメディア(マイナビニュース等)でのコラム掲載実績多数。

筆者自身、20代から30代前半にかけて「10回連続で片思い失恋を経験する」という壮絶な挫折を経験。
必死なアプローチによる空回りや過度な執着、自尊心の崩壊を自ら乗り越えてきた。

心理学の専門知識(公認心理師・精神保健福祉士などの国家資格)と、実体験に基づく独自のカウンセリング手法を融合。

「相手軸」の執着や過剰適応から抜け出し、ありのままの「自分軸」を取り戻すための具体的なアプローチを提案している。

相手の心理が分からない、過去の未練や執着から抜け出せないと悩む方々へ寄り添い、心の整理と自己受容をサポートする「心の伴走者」として活動中。

【保有資格】

公認心理師(心理職唯一の国家資格)
精神保健福祉士(国家資格)
国家資格キャリアコンサルタント(国家資格)
伴走型支援士
心理相談員
両立支援コーディネーター
ストレスチェック実施者
メンタルヘルス・マネジメント検定 II種・III種