第255回「70歳を過ぎて運命のパートナーに巡り会えた男性の話」
やなせたかしさんのアンパンマンがヒットしたのは、還暦を過ぎた頃というエピソードは有名ですが、広い世の中には、遅咲きの春を迎えた人生を送っている方が存在します。
今回お話するのは、私の知人である田所さん(仮名・男性)72歳の話です。
田所さんは昨年、最愛のパートナーと入籍しました。
71歳の田所さんに対して、お相手は、13歳年下の女性です。
何を隠そう田所さんは初婚でした。
田所さんは71歳までずっと独身生活を送ってきましたが、30~40年前まで婚活は行っていました。
お見合いを何度か経験していましたが、ことごとくお相手からお断りされてきたのでした。
田所さんは誰もが知っている大手企業に長年勤めてきて、収入はかなりのものでしたが、生まれつき外見にコンプレックスを抱えていました。
身長は158センチくらいで、髪の毛の量が若い頃から少なかったようで、「こんな自分が女性に相手にしてもらえるはずがない」と思い込んでいたようです。
以後、恋愛とは無縁の生活を送るようになったのでした。
そんな田所さんが60代後半にさしかかった頃、現在のパートナーとの運命の出逢いを果たします。
出逢いの場所は、お互いが所属している将棋クラブでした。
田所さんは20年以上その将棋クラブに所属していて、誰もが認める名手でもありました。
そこに奥様が入会してきたわけですが、お互い初めて将棋を指した瞬間に、ビビビと走るものがあり、すぐに惹かれあったようです。
どちらかというと内気な田所さんに対して、奥様の方が積極的にアプローチして打ち解けたようです。
古希を目前にして、年下の女性と初めて大人のデートを満喫している田所さんは実に輝いていました。
そして将棋の師匠として、尊敬の眼差しを注がれていた田所さんでしたが、彼女の心をわしづかみする出来事がありました。
ある晩、職場の人間関係の悩みを奥様が田所さんに吐露しました。
およそ1時間に渡る愚痴や不満を、田所さんは一切さえぎることなく、恵比須顔のまま黙って聴き続けたようです。
その包容力に安心しきった奥様はすっかり田所さんの虜になっていたのでした。
後に奥様はこう語っていました。
「田所さんの存在は、まさに捨てる神あれば拾う神ありでした」
将棋の師匠でもあり、人生の恩人のように映っていた田所さんの存在は、奥様にとって唯一無二のものになっていました。
そして二人は間もなくしてゴールインを果たして、新婚生活を送っている田所さんはとても幸せそうです。
奥様は献身的に尽くすような女性なので、毎日穏やかな日々を送っています。
今では夫婦で里親登録を行って、不遇な立場におかれている子ども達を迎え入れる体制を整えているようです。
新婚旅行は初の海外であるハワイに行くようで、張り切っていました。
田所さんは若い頃、恋愛を求めた時期があったようですが、残念ながら良縁はつかめませんでした。
自信を持てなかったようで、もしかしたらそのオーラがお相手にも伝わっていたのかもしれません。
しかしながら、長年の時を経て、田所さんの全てを受け入れて愛してくれるパートナーに巡り会えたのです。
好きこそものの上手なれとは言ったもので、田所さんは自分の趣味を極めた先で、運命の出逢いに辿りついたのです。
人間万事塞翁が馬とは言ったもので、世の中にはこのような出逢いの形も存在するのです。
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