第170回 「恥をかいてこそ強くなる」その2

2015年12月1日上手くいかない人生


最後のエピソードは、同じく高校時代の出来事です。

当時気になっている二人のクラスメイトに勇気を出してアプローチした時の顛末です。

一人目とは、ある選択授業で席が前と後ろになったことで、密接に話せるチャンスが到来したことがきっかけでした。

先生の都合で、自習時間に切り替わったわけですが、千載一遇のチャンスと言わんとばかりに件の女子に話しかけました。

二人っきりで会話をするのはこれが初めてでしたが、まるで意気投合したかのように話が盛り上がりました。

勢いで携帯の連絡先も交換できて、これからの期待が膨らんでいた矢先に、青天の霹靂が待っていました。


「付き合っている彼氏がいて、彼氏は他の男子と関わるのを嫌がっているから、連絡とかできない」


その日の晩に届いたメールです。

それも、本人からではなくて、その子の友達経由から私に送られてきました。

どうやらその子があの後、友達に「TAKA氏から連絡先を聞かれて困っている」というように相談をしたようでした。

その子のために一肌脱いだ友人が私に「身を引けメール」を代打してきたわけです。

あんなに好感触だったのに。
何だよ、彼氏がいたのかよ。

突然の展開に脳が処理できずに、悶々とした気持ちだけが残りましたが、その子との関わりは最初で最後となりました。

彼氏がいること知らずに、一人だけ空回りしていた自分が恥ずかい気持ちでいっぱいになりました。


二人目とはその数か月後になりました。

やはり異性への関心がひとしおだった私は、すでに新しく気になってしまったその女子に意識が切り替わっていました。

美代ちゃんという仮名で呼ばせてもらうことにします。

美代ちゃんもクラスメイトだったのですが、人懐っこい性格もあってすぐに打ち解けることができました。

一人目のような一回完結では終わらずに、日常的に気軽に会話を交わせるような間柄になれました。

年賀状もやり取りできるような関係になれて、次はデートへ誘うタイミングを妄想している日々でした。


そんな希望の未来を閉ざすかのような悪夢が再び襲ってきたのです。

「ねぇ、TAKA氏、美代さんって顔に似合わず好き者だったんだわ」

ある日、耳を疑うような一言をクラスメイトがぶつけてきたのです。

えっ、どういうこと・・・・・・?

私は動揺を隠しきれずにそう答えるのがやっとでした。

好き者という抽象的なキーワードを聴いて、あらゆる想像が広がりましたが、ポジティブなイメージは浮かびませんでした。

その実態を知りたくない気持ちと知りたい気持ちが交錯していて、理性を制御するのに苦しみました。

そのクラスメイトが言うのには、体育の時間に忘れ物を教室に取りに行ったら、美代ちゃんの携帯電話が机の上に置いてあったので、手に取ってみたのでした。


興味本位から保存してあるメールを覗いてみたところ、彼氏と思われる男性との生々しいやり取りが途切れなく残されていたとのことなのです。

確かに、美代ちゃんは社交的だし、容姿もかわいいし、運動部のマネージャーも務めていたので、男子に人気があるのは自然でした。

今回、自分の望むような形ではなくて、第三者から美代ちゃんの実態を聴かされたことで、払しょくできない猜疑心が芽生えたのです。

そのクラスメイトは私が美代ちゃんに好意を抱いていたのを知っていての発言なのだか、彼自身も狙っていたのか、そもそもその話自体が事実なのだかは想像の域に留まりましたが、私が美代ちゃんに対しての見る目が変わったのは確かです。

「信じたくない、でももしかして」という相反する気持ちがこびりつきました。


そして3学期の終わりについに事実を目撃してしまいました。

放課後に例の彼氏だと思われる男子と美代ちゃんが体を密着しながら下校している姿を目の当たりにしたのです。

あのメールの話は虚偽ではなかったのです。

そこには自分が見たことがない艶やかな女性が映っていました。

今回もまた彼氏がいることも知らずに能天気に気持ちが舞い上がっていた自分。

きっと周りの人間から見てもバレバレだったでしょう。

そう思うと恥ずかしくて情けなくて行き場のない思いで支配されました。

このような赤っ恥・無知体験の繰り返しは今でも忘れることのないものとなりましたが、このマイナスだとも思えるような出来事があったからこそ、成長することができました。

次回はその過程を描きたいと思います。
 


2015年12月1日

Posted by TAKA