第392回「『普通』という呪縛からの解放|恋愛の『他者軸』を捨てて自分を取り戻す心理学」

日々のカウンセリングやご相談の中で、年齢や性別を問わず、非常に多くの方から発せられる言葉があります。

それは、「私って、普通じゃないんでしょうか?」という問いです。

恋愛がうまくいかない。
交際経験が少ない。
あるいは、人を好きになること自体に疲れてしまった。

そんな思いを抱えながら、「世間の普通」と自分を比較して、ひどく落ち込んでしまう方が後を絶ちません。

でも、少し立ち止まって考えてみてください。

私たちが無意識に縛られているこの「普通」という言葉ほど、現代社会において曖昧で、うつろいやすく、見る世界によって変容する不確かなものはないのです。

今回は、恋愛における「普通」という幻に振り回され、自分を見失いそうになっているあなたへ、心を込めてエールを送りたいと思います。

1. データとSNS、どちらの「普通」が真実なのか?

昨今、若者の恋愛離れや未婚化のニュースをよく耳にするようになりました。

実際に公的な調査データやアンケートを見てみると、20代〜30代で「現在、交際相手がいない」「これまで一度も交際経験がない」という人の割合は、皆さんが想像している以上に高く、決して珍しいことではありません。

つまり、統計的な数字だけを見れば、「恋人がいないこと」や「恋愛経験が少ないこと」の方が、むしろマジョリティ(多数派)であり、「普通」なのです。

ところが、ひとたびスマートフォンを開き、SNSの世界や身の回りを見渡すとどうでしょうか。

クリスマスやバレンタインの華やかなデート報告。

次々と恋人を作っては楽しそうにしている知人。

中には、とっかえひっかえ交際相手を替えたり、複数の異性と器用に遊んだりしているような人たちの情報が、洪水のように目に飛び込んできます。

統計上のデータとは全く違う、「恋愛を楽しんでいて当たり前」というもう一つの世界。

それを見せつけられると、

「出会いを求めて必死にもがいている自分はみっともないのだろうか」
「恋人ができない自分は、やっぱりどこかおかしい(普通じゃない)のではないか」

と、強烈な劣等感や焦燥感に駆られてしまうのも無理はありません。

2. 「普通」を追い求めることは、「他者軸」で生きること

なぜ私たちは、こうも「普通」という言葉に苦しめられるのでしょうか。

それは、「普通」の基準が自分の中にはなく、常に「他者との比較(他者軸)」によって作られているからです。

SNSのタイムラインに流れてくる「普通」は、アルゴリズムによって作られた虚像や、誰かが意図的に切り取った「人生のハイライト」に過ぎません。

それに自分を合わせようとすることは、終わりのない幻影を追いかけるようなものです。

「周りがこうだから」
「SNSでみんながこうしているから」

という他者軸で恋愛に向き合っていると、本来の自分の感情はどんどん麻痺していきます。

自分が本当にその人を好きなのか、それとも「恋人がいる状態(普通)」を手に入れたいだけなのか。

いつの間にか目的がすり替わり、心身ともに疲弊してしまうのです。

3. 「普通じゃない自分」を許し、受け入れる

もし今、あなたが恋愛のことで悩み、「自分は普通じゃないのかもしれない」と自分を責めているのなら、今日からその呪縛を手放してください。

交際経験がゼロでもいいのです。
不器用で、一つの恋を引きずってしまってもいいのです。

逆に、どうしても心から惹かれる人が現れるまでは、一人で生きることを選んでもいいのです。

他人の基準で作られた「普通」の枠に、あなたの大切な人生を無理やり押し込める必要はありません。

恋愛において一番大切なのは、「世間的に見てどうであるか」ではなく、「あなたがどうしたいのか(自分軸)」です。

傷つくことを恐れながらも「誰かと深く繋がってみたい」と純粋に恋愛を求めるその感情は、決しておかしいことでも、みっともないことでもありません。

それは、あなたが自分の人生を豊かにしようとしている、美しく尊いエネルギーそのものです。

まとめ:あなたのペースが、あなたの「正解」

時代が変わり、環境が変われば、「普通」の定義などあっという間にひっくり返ります。

そんな不確かなものに振り回されるのは、もう終わりにしましょう。

周りがどんなに器用に恋愛をしているように見えても、あなたにはあなたのペースがあります。

他者軸のノイズをシャットアウトし、「自分はどう生きるか」「どんな人と、どんな関係性を築けたら幸せか」という自分軸を静かに見つめ直したとき、あなたの本来の魅力が輝き始めます。

あなたは、あなた自身のままで十分に価値があります。

「普通」という枠から抜け出し、あなただけの歩幅で、あなただけの幸せを見つけていきましょう。

私はいつでも、その一歩を応援しています。

⇓普通とは何かについて見つめ直せる作品

コンビニ人間 (文春文庫)

投稿者プロフィール

たか
たか
たかさん(公認心理師 )

恋愛や人間関係で悩み、自分を見失っている方に向けた心理コラムを22年間執筆・発信。

メールや通話による1対1の心理カウンセリングは20年以上継続し、累計5,000件以上の相談実績を持つ。

大手ニュースメディア(マイナビニュース等)でのコラム掲載実績多数。

筆者自身、20代から30代前半にかけて「10回連続で片思い失恋を経験する」という壮絶な挫折を経験。
必死なアプローチによる空回りや過度な執着、自尊心の崩壊を自ら乗り越えてきた。

心理学の専門知識(公認心理師・精神保健福祉士などの国家資格)と、実体験に基づく独自のカウンセリング手法を融合。

「相手軸」の執着や過剰適応から抜け出し、ありのままの「自分軸」を取り戻すための具体的なアプローチを提案している。

相手の心理が分からない、過去の未練や執着から抜け出せないと悩む方々へ寄り添い、心の整理と自己受容をサポートする「心の伴走者」として活動中。

【保有資格】

公認心理師(心理職唯一の国家資格)
精神保健福祉士(国家資格)
国家資格キャリアコンサルタント(国家資格)
伴走型支援士
心理相談員
両立支援コーディネーター
ストレスチェック実施者
メンタルヘルス・マネジメント検定 II種・III種