第336回「人の気持ちは思い通りにならないから仕方がない」

失恋した心に贈る仕方がない,運命,

 

君は何を言っているんだ?会う気はないよ

ダニエルから最後に送られて来たメールには、そう書かれていました。

彼と東京で再会するはずだった直前のやり取りです。

ダニエルとは、2015年の秋に京都の嵐山で出逢いました。

渡月橋の真ん中あたりで、大きなバックパックを背負っている彼が目に留まりました。

自前のカメラで川沿いの風景を撮影している彼に私から話しかけたのです。

Excuse me,please take a picture together!


私が外国人旅行客の方と一緒に写真を撮りたい時に発する第一声です。

ちなみに今まで20人以上は声をかけてきましたが、断われたことは一度もありません。

もちろん、ダニエルもその一人でした。

where are you from?


次に私が投げかけた質問です。

出身を聴くことで、どうして日本に来たのか、日本のどんなところが気に入っているのかを探って行きます。

まさに、リアル版「youは何しに日本へ?」の行為を5年以上前から旅行先でちょくちょく行っていました。

学生時代に留学生への日本語学習ボランティアにハマってからは、その名残のように実践しているのです。

ダニエルはフランス出身の28歳で、日本の漫画に興味を持ったのがきっかけでした。

フランスでも絶大な人気を誇っているナルトやワンピース、ドラゴンボール、ガンダムなどが好きなようでした。

彼は来日するのは今回が初めてのようで、京都⇒奈良⇒名古屋⇒箱根⇒東京という具合に1週間かけて遠征する計画を立てているようでした。

アニメ・漫画好きというところですっかり意気投合した私達は、連絡先を交換して1週間後に東京で再会して話をする約束を交わしました。

いつもは外国人旅行客との写真撮影と簡単なインタビューで終わっているのですが、今回は特例です。


その日の夜から毎日のようにダニエルの旅レポをメールで知らせてもらうようになりました(メールが来るかドキドキしましたが、すぐに送られてきました)。

関西から関東へ移動していく過程を実況中継のように教えてくれるのです。

奈良の東大寺に行って鹿と戯れた話や、箱根の大涌谷でロープウェイに乗ったエピソード等、初めての体験を満喫している様子がダイレクトに浮かびました。

箱根の段階では彼も再会を楽しみにしていると言っていました。

そしていよいよ明日東京に辿り着くというところで、何時にどこで待ち合わせしようかという具体的な話を詰めようとメールを送ったところ、彼から返ってきたのが冒頭の一行です。

「君は何を言っているんだ?会う気はない」

 

念のために複数の翻訳サイトで彼が送ってきた英語を和訳してみましたが、どこも同じ意味に訳されました。

すかさず彼に東京で会うのは難しいのかを確認したところ、

「私は予定が埋まっていて会える時間はない」


というそっけない返信が来ました。

そのメールを最後に、彼から私に新しいメールが送られてくることは二度とありませんでした。


私がなぜこのエピソードを紹介したのかというと、「国籍性別問わずに人の気持ちというものは急に変わることがある。」という一例を示したかったからです。

想像は膨らみますが、彼がなぜ直前になって会うのを拒絶するように心変わりしたのか本当の理由は分かりません。

確かなのは彼が「私と会う気がない」という事実だけです。

残された身としては、あれこれ要因を探索したくなりますが、こうなってしまった以上真相も分かりませんし、もうこれ以上追い詰めることも出来ません。

最初はノリが良かったのに、時間が経ったら冷めてしまったという関係は案外多いのではないでしょうか。

私もされた側だけではなくて、相手に「してしまった」という自覚も何度もあるので、あまり責められない部分もあるのです。

男女間の失恋や片思い等も同じような感覚があるかもしれません。

人の気持ちばかりは一方の努力や情熱だけではどうすることも出来ない限界を痛感しますよね。

私の場合は、「仕方がなかった。縁がなかった」として気持ちを納得させてまた新しい出逢いに向けて目線を切り替えて行きます。

このような短い時間でも得られた学びや気づきの醍醐味を知っているからこそ、次へのモチベーションへとつながっていきます。

失恋の場合は、先のことなど考えられずに、傷ついて自信を失ってしまっている心境の方が大多数だとは思いますが、

「今回は仕方がなかった、自分の力だけでは運命を動かせなかった」

と自己暗示のように諦めることも大切です。

未練が残っているかもしれないけれども、本当に望ましい形ではなかったかもしれないけれども、苦しみが今になってじわじわと押し寄せているかもしれないけれども、残念ながら今の時点ではどうすることも出来なかったのです。

少しずつでも事実を受け止められるようになれれば、あなたの運命は動き始めます。

Posted by TAKA