第212回「好きになれば必ず想いは通じると信じて苦しみ続けていたら」

上手くいかない片思い好意の返報性


好意の返報性
という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。


有名な心理学用語でもあるので、一度や二度は聴いたことがあるかもしれません。


平たく言うと、人は好意を受けられると、それを返したくなるという習性のことです。


確かに、自分のことを好きになってもらえるのは気持ち良いし、嬉しいことですし、そういう人間は大切にしたくなるものです。

親友や家族との関係性をイメージしてもらえれば分かりやすいかと思います。


好意の返報性を応用すれば、どんな恋愛でも成就できるものなのでしょうか。


今回は、その点にスポットを当てて展開していきます。


好意の返報性は、相手を好きになれば好きになってもらえる可能性が高いという心理法則ですが、恋愛の場合は必ずしも実現するとは限らないものです。

むしろ好きになってもらえるどころか、振り回されてしまう関係、好きにならない方が好きになってもらえるという、好意の返報性とは真逆の現象が頻繁に発生しているのです。

私はこの11年間、4000名ほどの恋愛に悩むみなさんから十人十色の相談ケースを聴かせていただいていますが、大多数の方々に当てはまっている共通点として、自分のことを好きになってくれない人を好きになって苦しみ続けていらっしゃいます。

片思いの悩みだけではなく、交際中、既婚者の方々からもしばしばうかがっています。

付き合っているパートナーがいるけれども、他に気になる異性がいたり、交際自体は続いているものの相手から恋人らしい扱いをされないまま付き合い続けているという関係がその一例です。

相手のことを好きになってアプローチしたり、気に入ってもらえるような対応を続ければ続けるほど本命に思ってもらえないという不条理な関係に苦しまれていらっしゃるのです。

好意を示しすぎず、相手の顔色をうかがわずに言いたいことを言ったり、自分の予定を優先したり、約束を破ったり、そんなつかみどころがなくて、相手に媚びない人間が好きになってもらえているのです。


自分のことを適当に扱っているようでも、相手が時たま見せる自分への優しさにときめいたり、わずかな可能性を感じてますます好きになってしまうという心境です。

自分のことを好きな人間には安心を覚えてしまい興が湧かないけれども、手に入るかどうかわからない宙ぶらりんな関係の方が恋のマジックにはまりやすいわけです。

人は手に入りそうで入らない対象に夢中になるものです。

好意の返報性という法則は適用外と言っても仕方ありません。


では心機一転して、自分が好きになった相手には、好意も示さないし、素っ気なく接すれば好きになってもらえるのかというと、ますます心の距離が開いてしまうことは安易に想像できるでしょう。

「押してダメなら引いてみろ」という有名な駆け引きがありますが、今まで好意を伝え続けてきた相手に、突然脈絡なく冷たく接したり、不本意ながらも上から目線であしらうような態度を取れば、一瞬気になるかもしれません。

けれども、相手はすぐに冷静になって、そっちがそういう態度ならこっちも離れるよ、そのままさよなら的な展開になってしまう可能性が極めて高いです。


押しても、引いてもどうあがいてもダメなものはダメなんですよね。


私も駆け引きを意識しすぎた結果、策士策におぼれてしまって仲違いになってしまった経験が一度や二度ではありません。

現に、好きになっても振り向いてくれない人となんとか成就できたという体験談はあまりにも少ない現状があります。

好意の返報性や押してダメなら引いてみろの駆け引きは万人に応用できるものではありませんが、大切なのは、縁がある相手ならば、これらの法則に頼らなくても、嘘のようにすっと上手くいくものです。

例えば、2年間一人の女性に片思いを続けていて、3回目の告白に敗れた直後に新しい出逢いが訪れて、その一ヶ月後に相手から告白されて交際スタートをしたというエピソードも珍しくはありません。


誤解を恐れずに申し上げれば、片思いにはまっている相手は自分のことを下に見ているのです。

自分のことを好いていることが分かっているからこそ、なびかないのです。

私はある時、一回りほど年が離れた女子を好きになったことがありますが、デートの約束をこぎつける場面で、「この日程と時間だったら会ってやっても良い」という相手本位の態度が目に見えたことがありました。

自分の価値を下げて相手に懇願して会ってもらう限り、対等な関係は築けないし、パートナーになんてなれるはずはありません。

そこで、私はこう返しました。

「そこまでして会いたくないし、そもそもういう言い方は失礼だ。そんな短い時間なら結構だ」

と、突き放したのです。

ここで逆切れされたり、引いてしまう人間ならば、縁が切れても構わないと腹をくくっていたのです。


別れても良いという吹っ切れた態度をすると不思議なもので、その子はそれからこちらの顔色を窺うかのように下手に出て、都合を優先してくれるようになりました。

この経験からも、いつも好き好きアピールするだけが得策ではない。

理不尽な目に遭ったら自分の意思もしっかり主張することで、お互いの立ち位置が再構築できることを実感しました。

人は好意を持ってくれた相手には好感を抱きますが、特別な関係になる恋愛関係となると、いくら好かれても応えられないと線引きしてしまう場合も多いのです。

そして、一人の異性だけに執着している状況では、視野が狭まっていて、なかなか他の異性の魅力や自分に本当に合っている人間に気付けないものです。

果たしてその人でなくてはいけない理由はあるのでしょうか。

上手くいかない相手には、好意の返報性や駆け引きに頼っても一向に脈を感じることは出来ません。

だから、どれだけ頑張っても報われない恋愛には見切りをつけて離れた方が将来的に良縁との出逢いにつながるのです。


分かっているけれども自分だけではもう諦めることは出来ずに苦しみ続けていたとしたら、ぜひ私に話を聴かせてください。

そういう時は第三者を頼ってでも、なんとか一歩新しい人生を踏み出すことが大切なのです。


もうこれ以上頑張らなくてもいいんです。

哀しくて一方通行な恋からは脱却しましょう。

Posted by TAKA