第276回「恋人と同棲中の異性に片思いをしていて苦しんでいたら その2」

2015年11月30日上手くいかない恋愛関係

※前回はこちらから

恋愛依存症 – 苦しい恋から抜け出せない人たち

あの頃の私は、確かに苦しい恋だとは分かっているけれども抜け出さない人たちの一人でした。

片思いの相手が彼氏と同棲しているという現実を知ってから、私は新しい感情に苛まれるようになりました。

それは嫉妬と言う自分でもコントロールができないほどの強い情念です。

彼女がいつも23時過ぎにメールを送ってきた理由は、その時間になると彼氏が就寝するからというものでした。

私は悶々とした気持ちを隠しながら、彼女の気持ちに寄り添いました。

彼女の前では、いつでも頼りになるいい男を演じていたかったのです。

彼女に必要とされることで、自分の存在意義を見出していたことに後で気づくようになります。

まさに恋愛依存の状態でした。

彼女は彼氏と同棲を開始してから、関係性が上手くいっていないようでした。

この手に入りそうで入らないという条件が、私を執着へと誘いました。

些細なことからの小さな喧嘩の繰り返しで、すれ違いの日々が続いていて彼女自身も相当ストレスが溜まっているようでした。

彼女はその都度自分を責めて、不安で心が折れそうになっていたようです。

そんな彼女をここぞとばかりに支えてあげられるのが私の役目だと思っていました。

どんなに遅い時間でも、私は彼女に寄り添いながら、愚痴を聴いたり、励ましながらやり取りをしていました。

彼女の「ありがとう」「楽になった」というその言葉だけが私を支えていました。

ところが、そんな関係が一ヶ月も続いているうちに、私自身も明らかに日常生活に異変が生じるようになります。

睡眠不足によって、仕事中に意識が散漫するようになったのです。

仕事に取り組んでいるのに、ため息と吐き気にもよおされるようになり、トイレの回数が増えて行きました。

食欲は減退して行き、イライラが募るようになりました。

親だけではなくて、友達にも感情的になってしまうのです。

そんな異変に気付いた友達は、気を遣って私が喜ぶような食べ物を差し入れてくれたり、

遊びに連れていってくれたのですが、そんな友達の好意すら素直に受け入れられなくなっていたのです。

「ありがとう」の言葉を出し惜しするくらい心が荒んでいました。

私が片思いの彼女に尽くしている姿が、私を支えようとしてくれる友達の振る舞いと重なり、

私に優しくしてくれる友達を心では見下していたのです。

そんな卑しい自分のことを好きでいられませんでした。

ありのままの自分を愛してあげられていなかったのです。

こんな自分がみじめで、なさけなくて、嫌いで仕方がありませんでした。

鏡で自分の顔を見ると、眉間にしわが寄っていて、やつれ顔が映し出されていました。

もう疲れた・・・・・・。

私はどんどん本来の自分から遠ざかっていました。

既に歯止めがきかなくなって行き、寝ても覚めても彼女のことで、頭がいっぱいです。

冷凍庫を開けっ放しにしたまま閉めるのを完全に忘れて、翌朝になって気付くような失態もありました。

彼女はそんな私の気持ちは知らずに、満たさない彼との生活ぶりを話し続けました。

私はその度に胸がしめつけられる思いで、気が気でなくなっていったのです。

最初は彼女の支えになれればという思いから無償の愛を注いでいるはずだったのに、

いつからか見返りを求めるようになったのです。

自分に振り向いてもらいたい一心で自分から連絡していたのですから。

無理に無理が重なって、胸焼けのように重圧がのしかかっていました。

私の心は限界に限界を迎えていました。

やめろ!俺が俺じゃなくなる!

ドラゴンボールで、ベジータが魔人ブウ(善)を引き剥がそうとした瞬間に、悪の魔人ブウが叫んだとっさの一言です。

この時の私も、これ以上片思いを続けていたら自分が自分でなくなるほどの窮地に立たされていました。

悪の心が肥大化して、私は自分らしさを見失いそうになっていたのです。

いつからか恋をしている自分が暴走寸前なくらいに、

コントロールできないほどの負のエネルギーに支配されていました。

もう少しだけ頑張れば、彼女が自分のもとにやってきてくれるかもしれないという幻想も限界でした。

このまま突き進んだら、執念だけが残って、身を滅ぼすような将来しか待っていないように思えなくなりました。

彼女に片思い依存している自分を認められるうちはまだ救済の余地はあるのです。

極限状態に置かれた私が選んだ道は、「片思いを諦める」という未来でした。

堕ちて行く自分からもう目を背けられませんでした。

続く

2015年11月30日

Posted by TAKA