第270回「友達が離れていったのは、あなたの性格や行いが問題ではない場合がある」

2015年11月30日上手くいかない人生

第58回 「 恋人どころか友達もいない孤独な人生に嫌気がさしていたら」 は、5年以上前に書いたコラムですが、未だにアクセスしてくださる方が多いです。

友達がいないこと、少ないことを悩んでいる人間がいかに多いのかを物語っています。

そこで今回は、久しぶりに友達関係について見つめ直すコラムを描きました。

一般的に友人関係が崩れてしまうのは、信頼関係を修復不可能なくらいに傷つけてしまったことが原因になりますが、必ずしも自分自身の振る舞いが起因しているとは言えない場合もあるのです。

私の事例を取り上げてその理由を説明して行きます。

私がそれまで順調に築いてきた友人関係が一変したと感じたのは、大学入学になってからでした。

小・中・高校時代の友人との距離感が開いて行くのを肌で感じたのです。

再会しても、話の中心は大学生活をいかにエンジョイしているかについてであったり、これまで彼女がいなかった友人に初恋人ができて、そのリア充ぶりをとくと話されて、彼らと自分との世界の差を知ることから、違和感を覚えるようになったのです。

今思えば、彼らが自分から離れていったというよりも、私の環境が彼らと正反対だっただけに、嫉妬や羨望の念から苦しくなって、自分から距離を開いていたことが理由だったのです。

そして、20代に突入して大学を卒業した後、それまで以上に大きく変化が生じました。

それぞれが就職や結婚という人生の転機を迎えたことがきっかけでした。

地元を離れて東京で就職した私は、まず、学生時代の友人達との交流が物理的な事情から激減しました。

三か月に一度、地元に帰省した際に逢えれば儲けものといった具合だったのです。

仕事のスケジュールでお互いの都合がつかずに、逢いたくても逢えないという具合でした。

20代後半になると、仲が良かった年下の後輩女子が結婚をしたことで、関係性が急変したこともありました。

それまでは二人で逢っていましたが、家庭を持った後輩に遠慮をして、控えるようになったのです。

男友達の中にも既婚者が現れて、子どもが産まれた話を聴くと、同じように気軽に遊びに誘ったり、連絡出来なくなりました。

中には、大学卒業後に就職せずにひきこもり状態になって、音信不通になってしまった友人も数人いました。

このように、それぞれ置かれている環境が大きく変化したことで、意識が切り替わって、培ってきた友人関係に亀裂が走ったり、距離が開いて行ったのでした。

20代前半の頃は、友人に連絡をしても、仕事が忙しいという理由で、返信が遅かったり着信がなくて、そもそも話を交わすことが難しい時期が重なりました。

そのことで、友人が自分のもとから離れてしまう恐怖や不安感と孤独感に絶えず支配されていたのでした。

そして自分だけ取り残されされていって、もう昔のように仲良かった関係には戻れないのではないかという絶望感に長い間苦しんでいたのです。

けれども、それは大きな誤解であることに気付いたのです。

お互いにとって必要な友情、縁というものは、その時にギクシャクしたり距離が開いていても、しばらく経ってまた復活するものであることを知りました。


30代になった今では、5年以上音信不通になっていた大卒ひきこもりの友人から、ある日突然連絡が来て学生時代のように頻繁に遊べる仲に戻ったり、一年に逢うのは数回だけだけれども、共通の趣味である音ゲーでセッションしたり、近況報告や思い出話に盛り上がれるような友人関係が維持できています。

大学を卒業して就職生活に切り替わった当初は、友達関係というものは、環境が変わっても離れてはいかないはずだという勝手な思い込みを持っていました。

漫画『ワンピース』のような熱い友情ストーリーに感化されていたところもあったのです。

しかし、人の心は水物です。

それぞれが就職をしたり、家庭を持つことで、ライフステージの中で優先順位というものが明確になってくるものです。

学生時代のような距離感を維持できなかったり、波長が合わなくなるのも至極当然であると気付いたのです。

自分自身もそうやって敢えて距離を取っていた友人がいたわけですが、また時間が経過して環境と心境の変化が訪れてもとに戻ったこともあったのです。

私の好きな言葉の一つに、禅の言葉で『?啄同時(そったくどうじ)』というものがあります。

両者のベストなタイミングがあった時に、二人の関係性が好転するという意味合いがあります。

友達がいない症候群に駆られてしまうと、自分に人間的欠陥があるように思えて止まなくなるものですが、状況が変わればまた自分のもとにやってくる縁もあるものですから、諦めたらもったいなのです。

人の心は水物だと言いましたが、感情が移り変わるからと言っても、全てが完全に切れてしまう縁ではありません。

長続きする友人関係というものは、たとえ一時的に離れていても、お互いが必要になれば再開できるものです。

ちょっと冷たくされたから見放されたとか、もう自分と逢う気がないんだと結論付けずに、相手にも今はそうせざるを得ない何らかの事情があることを想像する心の余裕が大切です。

そしてつかず離れずの関係こそが長続きの秘訣であることを意識していれば、相手への期待や失望感も薄れて気長に楽に付き合えるものです。

2015年11月30日

Posted by TAKA