第237回「人生でやり残したことは恋愛だけ。ストーカー化するシニアたち」

2015年12月1日実体験・人間考察コラム

先日、6月9日発売のサンデー毎日という雑誌を読んでいたら、気になるトピックが目に留まりました。

ストーカー化するシニアたち」という記事です。


急増する高齢者男性ストーカーについて特集を組んでいました。

年々増加しているということで、今回その背景について調べてみました。


検察庁によると、60代以上の高齢者によるストーカー犯罪が急増し、2013年が1919件。

10年前の2003年に比べると約4倍にも増えたという結果が出た。

加害者のターゲットは老若男女問わず。

ほとんどの被害者は女性。男性は加害者の傾向にある。

 

男性は女性に比べ、家族と死別したり仕事を退職したりなど心のよりどころを失った場合、孤立しやすい傾向にある。

「日本人は仕事一筋で打ち込んできた人が多い。70歳になっても一生懸命働く。

ところが、会社にとって用無しになってしまうと、自分の承認欲求を他に求めるが、それもうまくいかず女に求める。

知り合った女性にちょっと優しくされると、もっと愛してとエスカレートしていく。

組織に属していた頃は抑止力も働いたが、リタイアして10年以上過ぎると、その判断もつかなくなり本性を剥き出しにして逮捕されるんです。

海外には人生を楽しもうというリタイア文化があるが、日本にはそれがない。」

<ジャーナリスト 窪田順生さんより>

「この世代は仕事一筋で打ち込み、激しい競争社会を生き抜いてきた人が多い」とした上で、退職後に人生が一変することが影響すると分析。

「男性は女性に比べて地域のコミュニティーなどにも溶け込めず、孤立してしまいがち。寂しさを埋めたいという気持ちから、女性に過度に期待してストーカーに走る人もいる」

「高齢者は社会的地位が高い人も多く、拒絶されることに慣れていない。恋愛がうまくいかないだけで行動をエスカレートさせてしまうこともあるのではないか」

<ストーカー被害を支援するNPO法人「ヒューマニティ」の小早川明子理事長>

高齢者によるストーカー犯罪の実態(作者実体験あり)より


第226回コラムでも掲載しましたが、人は先が長くないことを悟った時に、「もっと冒険をしておけばよかった」という後悔の念に駆られる場合が多いようです。

オーストラリアの病院に勤めるナースが死の間際に患者たちが語る後悔についてまとめたトップ5は以下の通りです。

1. 「自分自身に忠実に生きれば良かった」

2. 「あんなに一生懸命働かなくても良かった」

3. 「もっと自分の気持ちを表す勇気を持てば良かった」

4. 「友人関係を続けていれば良かった」

5. 「自分をもっと幸せにしてあげればよかった」

ナースが聞いた「死ぬ前に語られる後悔」トップ5

人生でやり残したことは恋愛だけ。

退職によって、「やること」がなくなり、自分のアイデンティティを見失ってしまう人も少なくはないようで、仕事一筋だった人間ほど、恋愛に固執してしまう経緯を辿っているようです。

増加の背景には、団塊世代の相対数が多くなっていることも影響しています。

この世代は、若かりし頃から退職するまで、勤勉、勤労で、結婚相手は現代のように自分から見つけてくるというよりも、

周囲から縁談を持ちかけられたりなどして、恋焦がれるような恋愛を経験してこなかったような特徴があり、その衝動から暴走してしまっているのではいかという指摘が書いてありました。

失うものはもう何もないという開き直りの境地からも、歯止めがきかない行動を起こしているとも分析しています。

熱しやすく、拒まれると一転、一気に怒りに火がつく。

感情の沸点が低いのが高齢者ストーカーの特徴であると言います。

自分や相手に家庭があっても、「愛のない妻とは別れて一緒になる」とすぐに結婚に結びつけるケースが多いそうです。

コミュニティーとの接点のない社会的に孤立した高齢者が、気に入った異性に過度な期待を寄せてしまい、拒まれたことで思い込みから暴走につながってしまうという構造は何とも複雑な心境です。

もちろん、高齢者の中でも一部の人間に過ぎない例ですが、私達のこれからの生き方や、あるべき社会の形も含めて様々な課題を考えさせられました。

2015年12月1日

Posted by TAKA