第41回「大学入学後、変わり果てて行く友人を追って」その5
Y君の自宅の前に到着した私とN君ですが、いざ本人の棲家を目の当たりにすると、うろたえてしまいました。
敷地には、6畳くらいの広さのプレハブ小屋と、2階建ての一軒家が隣接されてそびえていました。
私がY君の家にやってきたのは初めてですが、高校時代から行き来しているN君によると、Y君の個室は、独立していりプレハブ小屋だと指摘しました。
「さぁついに来たけれど、で、どうするよ?」
お互い共通の思いで沈黙の時間が流れました。
私達は互いの目的を再認識し合いました。
まずは布石として、
N君と私は固唾をのんで返信を待ちましたが、15分経っても着信はありません。
それ以前から音信不通の日々が続いていたので、今回もいつものように、スルーされても違和感はないのですが、千載一遇のチャンスを前に、ここで踵を返すわけにはいきませんでした。
「やっぱりメール返ってこないんだわ……絶対今頃卒業生同士で遊びに行ってる真っ最中だって」
こうなったら、メールでの駆け引きを止めて、電話作戦に移りました。
数秒で留守番電話に繋がってしまい、私とN君で合計2回ずつかけましたが、応答はありませんでした。
結局、Y君と接触することなく撤収することになりました。
さすがに事前準備なしに行ったのもあって、呼び鈴を押してまでY君の所在を確認する勇気まではありませんでした。
その晩、N君の携帯にY君からメールが届いたようでした。
「さっきは電話に出られなくてごめん。今日は卒業式が終わってそのまま帰って家で爆睡してました」
やはりY君は、私たちが訪れたまさにあの時間帯、家の中にいたのです。
その日を境に、私もN君も、再び連絡が取れなくなってしまいました。
そして、それから1年が経とうとしていてた2007年2月下旬。
私とN君はついにY君と再会を果たすことが出来ました。
この1年に及ぶ時間の中で、私は数十回電話をかけ続け、N君もメールを送り続けましたが、たった一度も応えてくれることはあり
ませんでした。
Y君の卒業式に、時を同じくして彼の家に足を運んだ私とN君は、互いに環境が変わっても、Y君の存在を脳裏から拭い去ることは出来ませんでした。
私は都内での就職を、N君は、5年間の大学生活にピリオドを打ち、介護施設への就職を間近に控えていました。
もちろん今回も事前連絡はないまま彼の家に赴く計画でした。
時刻は前回と同様の15時過ぎでしたが、私とN君の想像では、留守であると想定していました。
呼び鈴を押しておよそ1分でしょうが、足音が俄かにドアの方に近づいてくるのが分かると、勢いよく開きました。
「Y君の高校時代同じクラスメイトだったTAKA氏です」
ドアが開いた瞬間、反射的にそう答えるつもりですが、予想外の展開が待っていました。
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