第40回「大学入学後、変わり果てて行く友人を追って」その4
大学4年生の11月に入り、卒業論文の提出や進路の下準備など、卒業に向けて本格的に忙しくなったこの時期に、親友のN君から、Y君の近況を聴かせてもらいました。
N君は地元が近いことから、Y君とは定期的にジョギングをしながら、共に汗を流したりしているようでした。
「TAKA氏~、Yの様子が最近変なんだよ~。
1か月前からY君のレスポンスが明らかに悪くなったため、心配になったN君は思わず1通のメールを送ったそうです。
N君「何かあったん?悩みがあったら聞くよ」
琴線に響いたのだか、観念したのだか、ようやく約束をこぎつけられたようでした。
そしてY君から飛び出た言葉が、
「俺、死にたい」
だったのです。
死を思いつめるほどの理由は何なのかを思索する前に、N君が教えてくれました。
「どうならYはまだ進路が決まってなくって、自分が将来どの職業に合っているか全く見えないからもがいているみたいよ。毎日先の見えない不安に押し潰されそうになっているみたい」
卒業間近のこの時期になっても未だに進路が決まってない焦りと不安は並々ならぬものであったことが容易く想像できました。
奇しくも高校3年の同時期に、Y君はセンター試験、一般入試組を出し抜いて、指定校推薦枠で合格をほしいままにしていました。
精神が不安定なままN君と会った理由も、やり場のない悶々とした想いを気心許した誰かに吐露したかったのと、ジョギングで体を動かして汗をかくことで、現実逃避ならぬ気分転換を図りたかったのだと察します。
既にN君の留年が決まっていたところからも、遅れ組同士で、同じ目線で本音を話せる安心感があったのかもしれません。
一部始終を聞いて、かつての高校時代共に苦楽を乗り越えてきた戦友でもある私としては、彼の窮地を見て見ぬ振りできませんでした。
他ならぬ私自身が大学生活を挫折していただけに、共感できると思ったのです。
しかし、私が何度メールや電話で連絡を顧みようと、彼は無言を貫きました。
私生活がひと段落ついた頃には、季節は春の卒業シーズンまっさかりの時期に突入していました。
これ以上Y君の出方を窺っていたら、ますます距離は開いてしまう。
偶然にもY君の卒業式の日、私もN君もフリーだったので、合流してY君の自宅へと向かったのです。
15時頃にはY君の自宅の前に到着したので、卒業式が終わってそのまま帰っていれば、今まさに家にいる計算です。
N君は、
「Y君は必ず家にいる」
私の予想は間違いありませんでした。
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