第141回「11年ぶりの再会が教えてくれたもの」 

2015年12月1日実体験・人間考察コラム


2012年11月下旬のことです。

高校時代の恩師とも呼べるK先生と、11年ぶりの再会を果たすことができました。

誰しも、あの時、あの言葉があったから、あの人が傍にいたからここまでやってこれたという、人生を変える大きな出逢いがあるとは思いますが、私にとってはその先生の存在があったからこそ、11年間の逆境を乗り越えることができました。


最初の大学生活で、それまでの価値観を180度変えるかのような新生活に染まっていた私は、どこかで無理しているもう一人の自分を演じていることに気付いていたけれども、行動を共にしている集団の群れから離脱できずに、仮面を被った日々を過ごしていました。


心の中では、常に孤独を抱えていて、「こんなはずではなかった」「最初の入り口に失敗していなければ」と、後悔と絶望の重圧に押しつぶされそうになっていました。

自分でもどうしたらこの状況を改善できるのか活路を見失っていて、自分を救ってくれる人を渇望していました。


そんな救世主などは到来しない現実の厳しさから、ますます自分の殻に閉じこもっていくようになっています。

暗中模索の日常から、私を明日へと奮い立たせる原動力として、胸の中に残っているあの時の言葉が残っていました。

そんな堕ちていた自分の心の中で、高校3年次に現代文を教えてくれた恩師の言葉がエンドレスに流れ続けていました。


死ぬな。生きろ。


もしも人生が辛くなって、どうしようもなくなったら、俺に電話してきてほしい。

どんな遅い時間でも良いから。

最後の授業でK先生が残してくれたその言葉が、絶望の渦中をさまよい続けていた私を照らす羅針盤となっていました。

K先生は、当時26歳という若さで、教育の世界に身を投じて2年くらいしか経っていませんでしたが、これまで出逢ってきた教員とは違った光を放っていました。

受験のテクニックや教科書に沿ったお決まりのカリキュラムに徹する教育方針ではなくて、生きること、希望を持つことの大切さを扱った教材を扱った心の授業を教授してくれました。

私は、K先生の影響から、国語の教員免許取得を目指して大学に進学したところもありました。


私がこうしてサイトを立ち上げてやってこれたのも、先生からの感銘を受けています。

私はK先生の電話番号を控えていなかったためにかけられませんでしたが、窮地に陥った時に、先生の言葉や授業を思い出しては、自分を鼓舞していました。


それから10年以上の月日が流れて、K先生と再会を果たすことができました。


きっかけは、FacebookでK先生の実名を入れて検索したことで、本人だと思われるページにたどり着くことができたことです。

実は高校卒業後の11年間、同級生や教員からの情報を頼りに探し続けていて、働いている職場までは知ることができたのですが、本人とコンタクトを取る術は見つかりませんでした。

Fackbookで11年越しの思いを凝縮したメッセージを送ったところ、予想だにしない展開が待っていました。

K先生が電話をかけてきてくれたのです。

先生は当時のことをよく覚えてくれていて、先生の方からぜひ逢って話したいと提案してくれました。

11年ぶりに再会したK先生は、当時のイメージと変わらずに、親しみやすくて、上から目線ではなくて、同じ立ち位置で話してくれるような温厚な人柄でした。

今でも高校生達に教鞭を執っていて、日々奮闘されているようでした。


先生は、

教員生活を送っていると、正直10あるうち、8は辛くてしんどいことの連続なんだ。

でも、たまに2つくらい良いことがある。

こうして再会できたのは神様のご褒美で、「教師冥利に尽きる」とはまさにこういうことを言うんだね。

というありがたい言葉をかけてくれました。


先生との思い出話から現在の仕事に至るまでの話は尽きることがなくて、あっという間に4時間以上が経ちましたが、最後の場面でお互いに誓い合いました。

お互い置かれている立場は違うけれども、これからも生きることの大切さを伝えていこう!

高校当時のように熱いものが胸に沁みわたりました。

ずっと探し求めていた恩人との再会を果たして、私は、「行動を移すことの大切さ」を改めて実感しました。


もしも私が、

「今更連絡しても、10年以上昔の人間に対して、わざわざ相手にしてくれるはずがない。 先生には今の生活があるのだから」

と、勝手な憶測を立てて諦めていたら、今回のような流れにはならなかったでしょう。


やってみなければわからない。

自分を大切に思ってくれる人や、苦楽を共にできた人間は、たとえ数年の月日が流れていても、また交流することができることもあるのです。


私は、その後間もなくして音信不通になって、連絡を取る手段をなくしていた高校時代の友人とも10年ぶりに再会することができました。

やってみてから、また考えればいいんです。

私の実体験を読んで、みなさんの中で一歩踏み出す何かのきかっけとなれば嬉しいです。

2015年12月1日

Posted by TAKA