第180回「当たり前のことを当たり前にできますか?」その2

2015年12月1日上手くいかない人生

ここで戦国時代から安土桃山時代にかけての茶の達人として名を馳せている千利休と弟子とのやり取りで、有名な逸話を紹介します。

千利休が弟子に「師匠、茶の湯の神髄とは何ですか」と問われた時の、『利休七則』という問答からです。

千利休はためらうことなく以下のように答えました。

茶は服の良きように

炭は湯の沸くように置き

夏は涼しく

冬は暖かく

花は野の花のように生け

刻限は早めに

降らずとも雨具の用意を

このように相客に心せよ。

 
この言葉を聞いた弟子は訝しげな表情で、こう答えました。


「師匠、何を今さら当たり前のことばかり並べ立てられるのですか!!」


千利休は動じることなく次のように返しました。



当たり前のことを十分に実行できるのならば、私があなたの弟子になりましょう。

 

当たり前のことを行動に移すことがいかに難しいか、そう諭したのです。

この言葉の真髄は、先人の千利休と弟子との関係性に限った話ではありません。

偏差値30台から東大理一を現役合格で目指す受験マンガ『ドラゴン桜』に登場する合格請負人桜木という人物が存在します。

彼が東大受験を目指し始めたばかりの生徒達に放つ名ゼリフで、

「当たり前のことを当たり前にできるようになる そうなるだけでも相当な努力が必要だと思え」

といったフレーズがありました。

当たり前のことを続けた延長線上にこそ、遥か遠い世界だと描いていた目的地に繋がっていることを物語っています。

そもそも当たり前のことって、冷静に見つめ直してみると、案外当たり前にこなせていないことが多いことに気付くものです。

かくいう私も、入社後のことですが、「この人苦手だ」と思っている同僚が視界に入ってきた時、あえて目線をずらして接触を避けてしまうことがしばしばありました。

そういう苦手意識を持っていると相手にも伝染してしまい、溝が深まってしまうのは言うまでもありません。

ここまで綴ってきて、25歳近くまで一度も交際経験がなかったBさんから、

「初めて恋人が出来ました」という嬉々とした報告を聴かせてもらえた時のことを思い出しました。

実は、私は初めてBさんとやり取りを交わした後の印象から、遅かれ早かれ、Bさんにはこの先見合った素敵な恋人ができると

いう強い確信がありました。

なぜならば、Bさんは、当たり前のことを当たり前にこなしていたからです。

例えば、私がBさんの相談に返答したら、必ず私を気遣った上で、感謝の言葉を返してくれることです。

「ありがとうございました、おかげで勇気が湧いてきました。やる気になった今がチャンスだと思うので、

早速、週末の街コンに参加したいと思います。

体調を崩しがちな季節なので、TAKA氏さんもご自愛ください。」

こんな具合のメールですが、これを目にした時、私が初めてBさんとやり取りを交わしていた際に生じた直感が確信に変わりました。

相談者の方々が私を気遣ったり、感謝の言葉を送ってくださる方と言うのは 少数派の部類に属するのです。

自分のことが一番辛いはずなのに、他者への感謝の意を示せる。

そして、新しい行動を移された方々には、その先に新しい出逢いが待っていたというプロセスは、共通しています。

回答者にお礼の気持ちを惜しまなく表現できる方は、きっと身近な人間にも愛されるべき存在であると言っても間違いないでしょう。

Bさんは感情を視覚的に表せる絵文字や顔文字をふんだんに使っていたので、そのこまめさと律義さに好感を持つ者が必ずいるはずだと想像していました。

案の定Bさんは間もなくして最愛のパートナーに巡り会い、数回のデートをかさねて交際に進展することができました。

私からすれば、決して特別なエピソードではなくて、Bさんの人間性と、当たり前のことを当たり前にこなしてきたことによる必然の結果であると素直に感じ取ることができたのです。

2015年12月1日

Posted by TAKA