第155回「“でないお化け”という幻影につきまとわれていたら」
でないお化けほど自分の可能性を摘んでしまう虚像はありません。
私はこの“でないお化け”に、長い間苦しみ続けてきました。
自分は義務教育時代に成績が悪かったから、今後学力が向上するはずなんてあるわけがない。
好きになっても、自分は容姿もかなり悪いし、運動神経も勉強面も何のとりえもない。
こんな自分が好きになった女子に相手にすらしてもらえるはずがない。
高校1年次までは、自分の過去を振り返ってばかりで、全てにおいて自信がなかった私は、自己評価を下し、行動を起こす前から無理だと決めつけて、自己保身に走る日々が続いていました。
いつからか、でないお化けが私の脳裏に住みつくようになっていました。
何よりも怖いのは、失敗すること、恥をかくことだったのです。
「ダメな自分が行動を起こしたら、こういう最悪な結果になるのに違いない」
と、想像を膨らませては、ブレーキをかけていました。
まるで目に見えないお化けのように、実在しない空想の呪縛にとらわれていたのです。
当時の私のように、行動を起こす前から、過去の失敗や恥ずかしい思い出を起点として、
「自分には無理だ」と決めつけてしまう方は少なくはないと思うのです。
これは日々様々な方々の話をうかがっている心象からそう言っています。
自分の中で作り出す妄想の世界ほど、現実世界とかけ離れているものはありません。
ここで、「ノミの話」を紹介したいと思います。
高校時代の恩師から教えていただいた話です。
ここで言うノミとは、驚異的なジャンプ力を持つといわれている昆虫のノミです。
成虫は体長1mmから4mmほどの小さな昆虫です。
ノミにまつわる、ある実験のお話です。
みなさんも想像してみてください。
20cm跳べるノミがいる。
そのノミを高さ10cmの箱に入れ、ふたをする。
しばらく放置。
箱の中で、ノミは跳び続ける。
そして、そのノミを再び箱から出してみる。
さてそのノミはどうなるでしょう。
私は、初めてその話を耳にした時に、「思いっきりジャンプして脱出する」と答えました。
でも、違うんです。
むしろ真逆な結果でした。
「10cmしか跳べなくなっている」
箱の中でふたをされていたため、10cmしか跳ぶことのできなかったノミは箱から出されても、10cmしか跳べない。
20cm跳ぶ能力を持っているにもかかわらず、こうなってしまうのはなぜでしょう。
それは、「箱の中」という環境で、「10cm」という壁をつくられてしまったために、「10cm」が、自分に跳べる高さの限界と思ってしまったから。
自分で勝手に限界をつくってしまったために、本来持っている能力を発揮できなくなってしまったのです。
他にも、漫画『HUNTER×HUNTER』に登場する主人公の親友であるキルアという少年が、実の兄の歪んだ愛情により、彼が危険な目に遭わないように、本来持っている能力を封じ込めているという設定もありました。
主人公を助けるために、呪縛から解放されて覚醒したキルアは、秘めていたポテンシャルを発揮できるようになります。
ノミの顛末を聴いて予想外でしたが、これはノミだけの話だけではなくて、私たち人間にも共通している話ではないでしょうか。
私自身が、自分の頭の中で結論を下して、行動を起こす前からびくついてしまい、何もせずに震えている日々を経験してきたので、切にそう思いました。
でも、現実は、考えているほどそう複雑には進まないものなんですよね。
実際に一歩踏み出してみると、案外楽に進んだり、自分が想像していたよりも上手くいくなんてことは往々にしてあります。
私がよく使っている言葉に「案ずるよりも産むがやすし」という諺があります。
事実、想像しているよりも、行動を起こしてみたら楽になるし、これまで悩んでいたことが嘘のように解消することがあるのです。
みなさんが抱えている「~になるに違いない」という常識は、あくまでも過去の経験と、一部の情報から形成された虚構の世界にすぎません。
でないおばけほど厄介な強敵はいませんが、現実と向き合う勇気と行動力の結晶でおばけは退散していきます。
童謡「おばけなんてないさ」にもあるように、今想像しているおばけなんて実在しませんし、おばけなんてうそです。
でないおばけに負けずに新しい行動を起こして、これまでの常識を覆して過去から脱却しましょう。
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